short | ナノ
今は怠い古典の授業中。
摩訶不思議な文字の羅列を漠然と眺めて、意味不明。
つまらない、と何気なく携帯を開いてタイミング良く新着メール。……。


「……先生、気分が悪いんで……保健室ええですか」






快諾してくれた先生の意に反して俺が足早に向かったのは視聴覚室。
みょうじが今居る場所。
普通より重たいドアを開けて中を覗けば呼び出した張本人は大音量でiPodを聴いていた。

呼び出しておきながら俺の登場に気付かんとか、マジ有り得へん。
鍵をかけることを忘れずに、みょうじに近付いてイヤホンを奪う。

あ、こいつボカロ聴いたてんか。
機械が歌ったやつとかキモい言うてたくせに。何やねん。
つかこれ俺が作ったやつし。


「……早いなぁ」
「早よ来い言うたんはどこのどいつや、アホ」
「まあ、俺だけど」


半笑いのまま何やら操作して傍の机の上にiPodを置く。
相変わらずええな、カーマインのiPod。俺も欲しい。iPodはもう1台持っとるから買えんけど。

なんてぼんやり考えてたから、伸びてきたみょうじの腕に一瞬反応が遅れた。
力強く抱き締められてほんのりとした体温を感じる。
今日のみょうじは心持ち温かい。


「な、ん……?」
「別に。それより、めっちゃ心臓バクバク言ってっけど……何、緊張してんの?」
「アホ抜かせっ……!」
「んじゃ、急いだ?」


図星に言葉を失えばクスクスとした含み笑いが鼓膜を震わす。
可愛い、なんてからかい調に言うから思わずいつものようにつっけんどんに返してしまってみょうじの纏う雰囲気が一変した。
ダンッ、荒々しく防音の壁に叩き付けられ両腕は拘束されみょうじは無表情。


「痛ッ……な、っにすんねん……!」
「折角だから優しくしてやろうと思ったけど、やっぱ止めた」
「ッ、みょうじ……」
「いつも通りヤるわ」


ピアス穴付近を舌で微妙になぞられて背筋がゾクリとした。
そうしている間にもみょうじは服をはだけさせ、学校内なのにもかかわらず俺はほぼ裸同然にされる。
寒さに身体が鳥肌立って視線を見下ろせば、ぶつかるひどく冷めた瞳。

そこに愛なんか籠ってないのにみょうじに見られてるそれだけでこの身体は悦びに打ち震えた。
なんて、浅ましい。


「フェラ」
「は、……?」
「俺はお前みたいに勝手に勃ったりしねーの」
「……」
「やんないなら、今日は終いな」
「! ……、ゃ……」


なら早くヤれ、と苛立ち気味に急かされ拙い動作でみょうじのものを取り出す。
確かに何の反応もしていない。
逆に俺のは緩く勃ってて、かなり恥ずかしい。
同い年なのに俺よりも少しでかい性器を眺めておそるおそる銜えた。

フェラは初めてなわけではないが、そんな一朝一夕に慣れるわけもなく。
目に見えてみょうじの苛々は募って、俺は焦って余計に上手くいかない。


「……ッん、は……んむ……っ」
「……はあ……こんなんでイけるわけねぇじゃん」
「! んんっ、ぁ……ぅ」


頭の後ろをガシッと掴まれより深く銜える形になり吐き気を催す。
乱雑にみょうじの良いように揺さぶられてこれはイラマじゃないかと思い始めた頃。
漸く口は解放された。


「壁に手、ついて」
「ん、……ッや、ぁ、ぁあ」


どうやら今日はバックでヤるらしい。
壁に両手をついてから直ぐ腰を引かれ必然的にみょうじに腰を突き出したような格好になる。
しかも慣らしなのかぬるりとしたものが孔に容赦なく入ってきた。

普段は排泄器官としてか機能しないそこもこの行為が始まるとやらしく収縮運動をし出して。
侵入してきた異物を中へ中へと誘う。


「ッあぁ、そ……こ、あか……、ぁ」
「も、良いだろ。挿れっぞ」
「ぉ、ん……ッふぁ、ぁ! ン、は……」


下腹部の圧迫感。
みょうじのが俺の中に入ってて、繋がってる。
この瞬間が一番幸せな時。
俺はみょうじが好きで、でもみょうじは身体目当てで。


「んぅ、ッぁ……みょうじっ、好き……や、ッ、あぁあ!」
「俺は、嫌い」
「! 知っと、る……ひっ、ぅぁ……ああ! 、んぁ」


みょうじの右手が唐突に俺の性器の裏筋を軽く撫ぜて先端もぐりぐりと押してくる。
あかん。限界や。
その意思表示をする前に窪みに爪を立てられ、呆気なく俺は射精した。
その際思いっきり中のものを締め付けてやったにもかかわらず奴のものが果てる事はなく。
イった余韻に浸る間もなく行為は続行された。


「ぁあッ……ひ、あ! ンん、っは」


白い壁に滴る白い液体。
実を結ばない憐れな生命体。
俺の感情もこいつらと同じ様に実を結ばず、ただ捨てられるだけ。






「んじゃ、また今度頼むわ」
「……おん」
「お前も物好きだよな」


俺なんか好きになるなんて。

一人取り残された視聴覚室でみょうじの言葉が脳内で反響する。
俺だって好きになるなんて思ってなかったわ、アホ……っ。
膝を抱えて取り敢えず痛みを引くのを待ち続けた。


みょうじが最後に聴いてた曲が耳に残って離れない。
気付いてんかみょうじ。それ、お前を想って作ったやつやねん。




痛いと何かが叫んだ
-それはどこの悲鳴?-



(俺はその悲鳴から耳を塞ぐ)


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