short | ナノ
※浮気ネタ(男主に彼女がいる)※




彼はいつも俺に"愛してる"と言う。
俺はそれにいつも"俺も"と返すけれど、いつだって心が満たされた事はない。


「ぁ、……ン……はぁ、ぁ、あ」
「……な、そろそろ限界なんだけど」
「ん……えぇ、よ……キて……ぁ、ッあぁ!」


散々慣らしてるのに何度も繋がっているのに、挿入する時はゆっくりとしたもの。
焦れったい。

誘うように腰を動かせばなまえは苦笑して、残っていた半分を押し込んだ。
その際に先端が前立腺を掠めて意図せず背が反る。
ついでに中も締め付けてやれば小さく上がった呻き声。


「、今日はやけに積極的だな」
「ッん……積極的なんは……はぁ……嫌、い?」
「いいや、好き……蔵」
「なん……?」
「愛してる」


ほら、またや。
なまえのことは好きだけれど、彼の言葉ほど信用ならないものはない。
だってなまえには。


「、そういうんは……彼女さんに、言うたればええのに……」
「……あいつよりお前の方が好きだから、良いんだよ」
「ふあっ、んん……嘘、つき……ぁッ、ン」


俺の発言を照れ隠しとでも解釈したんだろうか。
嘘じゃねぇよ、そう笑ったなまえは嬉しそうだ。
続きを強請ろうと首に手を回したところで視界の端にあったなまえの携帯が着信を伝えるべく光る。

取らんで。気付かんとって。今目の前に居るんは俺なんやから。俺だけを見て。

でも、そんな俺の気持ちが彼に伝わるはずもなくあっさりとなまえは手を伸ばす。
せっかく回した腕も外された。
繋がった部分がどくどくと存在を主張してるのに、欲しいものはどうしたって手に入らない。


「……何? 今日は蔵んとこに寄るって言っただろ」


携帯口から盛れる不明瞭な高い声。なまえの彼女。
小さくて可愛くて、なまえにぴったりな女の子。
どう頑張ったって近付けるわけもないし勝てるわけもない。

分かっとる。
それでも足掻く俺はきっと滑稽なんやろな。


「……ああ。……うん、分かった。なるべく早く帰るよ……じゃ」


"帰る"その言葉に身体が震えたのを果たして気が付いたか否か。
力なく眉をハの字に下げたなまえが言おうとしてる台詞は容易に想像がついた。
だから、聞きたくなくて口を塞いでやる。


「、ん……蔵……」
「っは、何も言わんで……はよ終らそ……? も、限界……ッやねん……!」


四肢をなまえの身体に絡ませて煽るように下腹部に力を込める。
途端に余裕が形を潜めたなまえの声。


「、お望み通りに……!」
「あ、ぁあっ! ふ、ぅン……なまえッ、あ……ンぁあ、っ」


恋人との情事が気持ち良いのに変わりはないが、この表情を独り占め出来ないのが悔しくて哀しくて。

なまえの背に付いた傷痕が妬ましい。
俺はこの愛しい身体に痕一つ残すことは叶わないのに。


「、ッく……ら!」
「んぅ、なまえっ……はぁ、あ! ……もっと欲し、ぃあっ……ゃああ、ァッ」


ぎゅっと両拳を握り込んで精一杯なまえに密着する。
少しでもくっついていたくて、少しでも熱を感じていたくて。
こんなことをしとるからなまえが居らんくなってから虚しくなるんや。知っとる。
眉を寄せたなまえは俺の要望通り激しく最奥を突いてくれて、時折前立腺を擦ってきた。

気持ち良いのに苦しくて、確かに愛しいのに憎くて仕方がない。



「ッあぁ、も……あかっ! 、イくッ……ぁ、ン」



哀しいほどに妬ましくて羨ましくて、でもやっぱり好きで好きで堪らなくて。



「俺も……ッ!」
「ふぁ、あ……、ッああぁ!」



ビクッと全身が跳ねて、俺は自身の腹の上になまえは俺の中に熱を吐き出した。
この熱と一緒に感情も捨て去れたらきっと心も身体も楽になるだろうに。








「……ごめんな、ほんとはもう少し居られるはずだったんだけど」
「ええって、くどいで」


頭を撫でる手を甘受して今日も本音をひた隠しにする。
行かないでずっと傍に居て。
それを素直に伝えられる日はいつか来るのだろうか。


「蔵、……大好き」
「嘘吐き……」


俺はなまえを嘘吐き呼ばわりするけれど、一番の嘘吐きは自分だと十二分に理解していた。
聞き分けの良い子を演じて必死に離れていかないでと願う。


「愛してる」
「……俺も」


触れるだけの軽いキスを去り際に残されて、なまえが居なくなってから腹を抱えこむ。
腹の中が熱くてしゃーない、けど腹が満たされても心までは満たされない。
このまま孕んでしまえばええのに。




その器の底は抜けている
-満杯、それは至福の言葉-



(だって、起こり得るはずがない)


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