short | ナノ
ピンポーンと来客を知らせる呼び鈴が鳴って転がる様に玄関へと走る。
今日は久し振りになまえと遊びに行くのだ。

半年前位からなまえの家には外人が住みこんでいて、それは俗に言うホームステイ。
その世話なのか知らないが学校では常に外人の相手をし、遊びに誘っても断られることがほとんどで。
だから、本当に楽しみにしてたのに。

玄関扉を開けた瞬間、俺はピシリと固まった。




「ごめん、コイツらも一緒に……なってもた」
「は? ……はあッ!? おま、ドタマかち割ったろかあぁああ!」




俺の怒号は快晴の空に響き渡ってどうやら鳥だけを吃驚させたようだ。
外人の奴らは俺の怒りがよく理解出来なかったのか頻りに肩を竦めている。
そしてなまえは怒りの理由が分かっているためかすまなそうに眉を寄せていた。


「……謙也、ほんまごめん」
「ありえへんありえへんほんまに何やねん最ッ悪!」
『なぁなまえ、こいつ何で怒ってんの?』
『つかこれで同い年? うわー見えねぇ!』
『あーもー! お前ら少し黙っとき!!』


早口の英語を捲し立てる二人の外人になまえも流暢な英語で返していた。

つか指差すなや、しかもなまえに近過ぎやっちゅーねん!
ああでも金髪なんかめっちゃ似合うとるし目も蒼いし、俺だだかぶりやんか。
なまえもなまえで白石みたいな日本人離れした容姿を持っとるし。
改めて目の前の三人を見ると美形揃いで何や疎外感。

なんて思ってたら鼻の奥がつんとして視界がぼやけだして、言い合いをしていたなまえが焦った顔をした。


「っ謙也、泣くなや!」
「泣いて、へんわッ……! あほんだらああぁ……、ふぇ」
『あーあ、なまえ泣かせてやんの』
『なまえさいってー』
『お前らマジ黙れ!』


玄関先で大の男がマジ泣きとかカッコ悪い以外の何者でもないのだが。
一度緩んだ涙腺がそう簡単に締まるはずもなく。
傍目から見ても分かるぐらいに慌てた様子のなまえを尻目に俺の涙はとめどなく溢れ出てくる。
正常な判断が出来ない脳内では外人の奴らが何を言っているかは分からず、ただ雰囲気から揶揄しているのだけが分かった。


「っう、ぅ……く、っぇ……」
「け、謙也ぁー……」
「ふぇ、っなまえなんか……ッも……知ら、ん……! 、ぁ」
「謙也、泣かんで?」


なまえの親指が次から次へと溢れる涙を掬って一時的に視界がクリアになる。
開けた俺の眼に映ったのは困却したなまえの顔。


「謙也に泣かれると俺、どしたらええか分からん」


その表情が思いの外珍しくて少し大袈裟に喚いてやった。
俺のこと散々放置しとった罰や。




鈴生りに湛える滴
-まだまだ出るんだから-



(そのまま困っとればええねん!)


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