short | ナノ
おてんとさんが燦々と降り注ぐ今日は快晴。
俺達3年の最後の大会の、所謂初戦。
ほんまに晴れて良かったわ。
眩しさに目を細めて日陰から空を仰ぐ。

とある人を待ちながら思い出したのは会場に残してきた部員の事。
天候に恵まれた今日、初戦ということもあってか皆浮足立っていたのが唯一の気がかりだ。
まあ、実際はそれだけやないんやけど。


「! なまえさーん、こっちやー!」


彼の地毛の茶髪を目に留めて、こっちの位置を知らせるべく大袈裟なほど手を振った。
周りの女子とかがこっちをちらちらと見てくるが気にしない。



「蔵ノ介くん」



なまえさんはすぐに気付いてくれて小さく振り返してくれる。
行き交う人混みを擦り抜けたなまえさんは小走りに俺の前に。
変装かは分からないが、顔にかけられた大きめのサングラスがちょっと勿体無い。
勿論似合ってはいるのだけれども、やっぱり素が一番やわ。


「まさか、ほんまに来てくれるとは思わんかったわ」
「豊くんが手回ししてくれてね」


豊さん、なまえさんのマネージャー。
以前会った気難しそうな風貌を思い出して、仕事の早さに納得。
こういう都合には前からマネージャーさんに色々とお世話になっている。


「マネージャー様々やな」
「そうだね。後で手土産でも持って行こうか」
「おん! ほな、皆んとこまで案内するわ。皆楽しみにしてたんやで」
「そう? それは嬉しいな」


にっこり。
正にその形容が相応しい表情で微笑むなまえさん。
なんでこんなに美人なんだろ。


「あのぉー……」
「はい?」


四天宝寺の会場に連れて行こうと手を取った直後に女子から声をかけられて。
咄嗟に手を離した。
女子達の注目は浴びてなかったから特に問題はなかったようだ。


「モデルのなまえさんですよね」
「……えぇまあ」


肯定を示せばきゃいきゃいとはしゃぐ彼女ら。
自分のことにしか目がいってない。
なまえさんが困った顔してんのに早よ気付きや。
悶々とした気持ちのまま俯いてると不意に彼が口を開いた。


「今私用で来とるから、あんまはしゃがんといて、な?」


下唇に人差し指を押し当てて、久し振りに聞いた方言は懐かしかった。
普段が標準語なだけに、女子らは方言のお願いを断る術もなく。
やはりきゃいきゃいと走ってどこかへ。


「……ええの?」
「勿論。今はファンの子達より蔵ノ介くん達の方が大事やし」


ぎゅ、さっき咄嗟に離した手を今度はなまえさんの方から握られて。
さ、案内して。
柔らかい声と顔付きで言われた。




dash and be over
-あれは既に過去の事-



(そ……か、なら早よ行こ!)
(繋いだ手は温かった)


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