short | ナノ
真昼直前の心地好い日差しを受けて程好く身体も温まり眠気が催してくる。
迫りくる生理的欲求には逆らえず欠伸を噛み締めた、ところを丁度先生に見付かった。
あ、と思った時には既に遅く見事数学の問題を当てられる。
まあ数学は得意科目だし問題も簡単だったから、難なく黒板に正答を書き連ねてやった。


「(普通に注意すりゃ良いのにねぇ……)あ、桃だ」


着席すると同時に窓の外からわっという歓声が沸き上がったから視線を投げて思わず呟く。
ちらりと前を確認して、運良く聞こえていなかったらしく先生は見向きもしない。
再度外を見下ろせばグランドの真ん中で桃がクラスメートに頭やら背中やらを叩かれていたところだった。
一頻りの称賛を全身で受け止めてその顔に浮かぶのは惜しみ無い程の人懐っこい笑顔。


「(かわいー)……ん?」


こん、と乱雑に丸められた紙屑が俺の机上に降ってきて、頭上に疑問符が飛ぶ。
飛ばしたであろう人物に視線を向ければいつにも増したキツイ眼差しで目下の紙屑を開くよう示唆された。



――外見ながらにやにやしてんじゃねぇ。気持ち悪い。



辛辣な言葉も最早慣れっこで返事を書いたノートの端をこれまた乱雑に破って投げ付けてやった。



――うっせ!可愛い桃が悪いんだっつの。



しかも手元が狂って(ちょっと狙おうかと思ったけど!)それは海堂の頭に直撃ヒットし床に落下。
睨みを通り越して殺気立つ奴から慌てて顔ごと背けて、やはり目線は桃に向いてしまう。

お、ナイスパス。
あいつ運動神経だけは良いからなぁ。
桃の居たチームは言わずもがな、勝ったようだった。

黒板を消しだした先生に漸く前を向けばいつの間にかページは進んでいて。
言っているであろうページへぺらりと教科書を捲る。
数分だけまともに話を聞くもののそう集中が続くわけでもなく、再び飛んできた紙屑に意識を持ってかれた。



――桃城を可愛いって言うのはお前だけだ。





「(……えー、そうかー?)」


疑問と非難を込めて海堂を軽く睨んでみたがもう相手をしないという意思表示なのか知らん顔である。
あんなに可愛いのに、誰に言うでもなく心中でぶつくさ言ってまたもや外を見た。

そしたらばちりと視線がぶつかって、一瞬目をしばたたいた桃はにかっと破顔。
こっちも笑顔で返して手を振ってやれば同じ様に桃も手を振り返してくれた。
ほら、やっぱ可愛いじゃん。



――そこらにいる媚へつらう女子達よりずっと純粋で可愛いって。



その精一杯の主張を書き込んだ紙屑は海堂に投げつけてやった。




フィルター規制中
-いいえ、これが普通です-



(海堂の溜め息が聞こえた気がした)


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