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『お昼の校内放送の時間です』


控え目、しかしはっきりとそれは機械を通じて発せられた。

この声はいつ聴いても好きだ。
ずっと聴いていても厭きない。
寧ろ永遠に聴いていたいとさえ思う。

二言三言義務的な内容を読み上げると次いで曲がかかった。
最近人気が出てきたグループ。
この高くも低くも変幻自在な声質が好評らしい。

声が良いのは認めよう。
だが彼の声に比べたら何百倍と劣る。
何故周りの奴らは気付かないのだろうか。
それが不思議で仕方ない。
確かにあれは常人の手が及ぶ領域ではないけれど。


「……忍足、鼻の下伸びてんぞ」
「侑士キモい」
「跡部も岳人もひどっ!」
「本当のことだろ」
「……もっと言葉をオブラートに包んでや」


生憎、落ち込む忍足を労わってくれる人は此処にはいない。


「あーぁ……侑士、黙ってればカッコいいのになー」
「何やねん岳人、まるで俺が喋ったらあかんみたいやん」
「そう言ってんだ変態」
「跡部は俺に恨みでもあるん……?」
「何俺の侑士苛めてんの、跡部」
「事実を述べたまでだ」


両肩にかかる重圧。
聴き慣れた彼の声。
緩んだ頬を抑えられない。


「なまえ! い、今ッ」
「ん? 俺の侑士って言ったけど」
「俺の、……っ」
「気に入ったか? なら、好きなだけ言ってやるよ」


頬を朱に染める忍足とその頬に手を添えるなまえ。
忍足はこれが地なのだろうが、確実になまえは悪乗りしているだけだろう。
現にニヤリとした笑みを顔に貼り付けて跡部を小さく見た。




「〜〜〜〜っ、イチャつくんなら他所でやれ!!」




本日一番の怒声が学校に響き渡った。
当の本人達は素知らぬ顔だったが。




福音の讃美歌
-嗚呼、これぞ正に美声-



(侑士は俺の嫁だし)
(なまえが旦那さんなら大歓迎やっ)


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