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※ 白石→大学生


彼、みょうじなまえという男は独占欲が強い。
というのが白石蔵ノ介の見解である。

付き合って最初の誕生日に指輪を貰った。
キラリ、光に反射してそれは銀色に輝き綺麗の一言に尽きる。
嬉しくて嬉しくて。毎日欠かさず右手の薬指に嵌めて過ごした。
その白石の姿を見たみょうじもまた嬉しいと口にし、とろけるように微笑み合うのは何年も前から変わらぬ光景だ。

付き合って間もない時期に贈られる指輪は、巷では大層評判が悪い。
しかし、こと白石とみょうじにおいては関係のない風評だった。
クリスマスにはシンプルなネックレスを。ホワイトデーにアンクレットを。次の誕生日にはシック系の時計を。次のクリスマスには揃いのピアスを。
みょうじは記念日には何かしらのプレゼントを欠かさず、何なら何もない日にも「蔵に似合いそうなやつがあったから」と袋を差し出すのである。
勿論その全てを身に付けたし、その為だけに開けるつもりもなかった穴も開けた。

他にも香水やブレスレット、靴や帽子、果てにはシャンプー、リンスなどまでも貰った。
まるでなまえに包まれているみたいだ。
その度に白石はひどく満足そうに口元を歪ませている。


***




「あっかああんッ!! 助けてや白石ぃ!」
「……」


けたたましくサークル室の扉を開け放ち白石に飛び付いて来たのは中学来の親友、忍足謙也。
毎日のようにやって来ては何かと理由を付けて白石にくっついていた。
当然親友と認めている白石がそれを邪険にするはずもなく。慣れた手付きでその抱擁を受け入れている。
後輩曰く「あんたらも距離感バグってんすか」とのことだが、みょうじも同意である。

その光景を傍観していたみょうじの双眸がすっと澱む。
顔は笑っているのに目が笑っておらず、冷暗に陰っているのだ。
これはただの嫉妬であると白石もみょうじ自身も十二分に理解していた。
だからこそ。白石は謙也からの過剰とも思えるスキンシップの数々を拒まなかったりする。

「(……それや、それ。その瞳が堪らんのや)」

ぞく、白石の腰に甘やかな痺れが走る。
あの優男で有名なみょうじが妬心に駆られて底冷えするような瞳をするなど。

「(俺はもうとっくになまえのもんなんやけどなあ)」


謙也を窘めるために手を金髪に添えて、キラリ、指輪が時計がピアスが光る。
みょうじの贈り物で身を包みみょうじの嫉妬を受ける、なんて。なんて。


***




「、っん……っふ、」
「……は、」
「は、ぁ、……んんッ!」


噛み付くような荒々しいキスを受けて、やはり腰に響く。
苛立ちの所為か早急に長い舌が割り入って歯列や歯茎、上顎の内側をと撫ぜ回して。
ついてくのに必死だと白石はふわふわしていく脳内で思った。
何分と続いたかのように感じる長い長いキスを終えてそろりと視線を交わらせれば、欲情の色が露になったみょうじの眼が在る。
襲われる。
直感的にそう感じるのだけれど、しかしてそれが実行されたことはない。
どうしたものか、いつも白石は頭を抱えていた。


「……まだ、足りないん?」


こんなにも熱っぽい眼差しをしているというのに。
頭の天辺から足先までみょうじのもので固めているというのに。
押し黙るみょうじに焦れて、白石は常日頃から秘めていた爆弾を投下することにした。




「なあ、次は……俺の処女貰うて、ッ」




言い切る前に喉仏に噛み付かれる。
一度手を出してしまえば後はもうなし崩しのように。
首輪の取れた獣とはこのような状態を指すのかもしれない、と。
乱暴に食い開かれながら白石は笑った。




充填完了
-望み通りに-



(罪悪感)
(これがみょうじを白石に縛る首輪)


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