short | ナノ
上靴と床の絨毯が擦れる音の合間に生徒の弾んだ声がする。
私語厳禁を掲げた図書室のカウンターの内側からそちらを見やれば途端に声を潜めた生徒。
ともあれ原因が原因なだけに非難を込めた黙視だけに留めて置く。

ぱこ、携帯を開く音は私語同様にこの空間には不釣り合い。
だけれど自分のことは棚上げにして悪びれもなくメールの新規作成画面を開いた。
あいつのことだから携帯はマナーモードにしているだろう。


To:なまえ
Sub:暇
―――――――
本の整理、後にしろや


送って数分しない内に新着メールを伝えるべく携帯が震える。
大っぴらに携帯を出すことは少なからず憚られたから本を読んでる風を装ってカウンターの下で確認。


From:なまえ
Sub:Re:暇
―――――――
後て、部活遅れるで?


その文面を読んで初めて今の時間を視界に入れて、あいつの気遣いに心がほんのり温かくなる。
だが時間的にいえばとうに部活開始時刻は過ぎており今更な気がした。
しかも、今日の部活内容はオサムちゃんのツッコミだかボケだかの指導だったはずで。
はっきり言って部活をサボって自主練するつもり満々だったのだ。

この放課後当番が無ければ。




To:なまえ
Sub:Re:Re:暇
―――――――
今日のは出ても出なくても同じやわー
どうせオサムちゃんの無駄ばな(ry


From:なまえ
Sub:Re:Re:Re:暇
―――――――
おま本音自重www
後数冊やからこれだけ済ますわ


To:なまえ
Sub:Re:Re:Re:Re:暇
―――――――
10秒で終わらせろや
(゜凵K)q


From:なまえ
Sub:Re:Re:Re:Re:Re:暇
―――――――
無w理w/(^q^)\




普段は良く気が付くくせに相変わらず変なとこで鈍感な奴だ。
何のためにメールを送ったと思っているのか。




「(お前がそっちに居ると女子が鬱陶しいねん……)ったく」




なまえとの二人っきり(普段は3人)の当番である今日に限って、何故か整理しなければならない本が多い。
しかもやたらと分厚いものばかりで、その3分の1を抱えたなまえは早々に片付けに向かった。
いつもだったら準備室の方の整理を奴に頼み、俺が生徒側を整理するのだが。
俺が何か言う前になまえは本棚の向こう側に消えてしまった。


「光」
「……おっそい」
「堪忍堪忍。これでも急いだんやで?」


知っとるわ、という言葉は喉の奥に引っ込んだまま視線をなまえから膝の上の本に落とす。
隣で椅子を引く音を聞きながら文字を目で追うも全然頭には入ってこない。
動く気配になまえも本を開いたのが分かった。
何読んでんやろ。
ちらりと横を見たら「素直や無いなぁ」と笑顔で頭を撫でられた。




柔らかい温かい
-存在そのものが-



(奴には全てお見通しらしい)


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