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「ほんなこつ、お前さんはむぞらしかねー」




定番化しつつある裏山への散歩という名のボイコット。
放浪癖。彼の悪癖。
そして、今日も例外ではなく裏山へ授業をサボって訪れていた。


「……ほんと、千歳は猫が好きだな」
「うんっ! こげにむぞらしか生き物ば他におらんたい!」
「……そか」


そう、サボっているのだ。俺と一緒に。
移動教室の際に忘れ物をしてしまいクラスのだちを先に行かせたのが敗因だった。
むしろ、何故忘れ物したし俺。
あそこで教室に行かなければ千歳に会うこともなかったし、ここに連れられることもなかったのに。

千歳と一緒に居ることが嫌な訳では断じてない。
しかし。


「(……つまんな)」


ここに来るのは好まなかった。
理由は単純明快。千歳が相手してくれなくなるから。
猫が来るまでは全然良い。
ふらりと気紛れにやって来たら――そこからは忍耐と我慢のフル稼働だ。

普段はそれこそ鬱陶しいほど俺に引っ付いている千歳は野良猫が現れた途端、掌を返したように構ってこなくなる。
話し掛けても会話が成立しないか最悪無視されて、虚しくなるのが関の山。
それでも。いつものこと、と今日も昼寝をしてやり過ごすことにした。


***




「男の嫉妬ってどうよ、財前くん」
「……いきなり何すか。つか、くん付けキモい」
「手厳し! ……まあいい。で、どう思う?」
「はあ……別に、普通やないですか……?」


至極どうでもよさそうに(実際どうでも良いのだろうけど!)財前は答えてくれた。
因みに今は部活中。
さっき財前とペアを組んで師範・ユウジペアと試合をしたために給水をしている真っ最中。
千歳はいない。


「普通かー……心ってか器、小さくね?」
「……そんなことないと思いますけどね」
「俺はこう……懐深くありたいわけよ」


身体的な包容力だけではなく精神的な包容力。
もしかした千歳はそんなこと望んでないかもしれないが。
彼氏という立場上必要不可欠だと思っている。少なくとも俺は。
数秒間の沈黙を経て、財前は鼻で笑って口を開いた。


「へえ? ……ま、頑張って下さい」
「おま、絶対馬鹿にしただろ」
「してませんよ。アホや思うただけで」


それ同じ意味だろ、そう返せば意味あり気な笑みで「全然ちゃいます」と返される。
その真意を探るべく言葉を発しようとして、白石に遮られてしまった。
どうやら今度はシングルの打ち合いのようで。
後ろ髪を引かれながらコートに脚を向けた。




本日も青天なり
-これが平生-



(男の嫉妬はあかんそうですよ?千歳先輩)
(……光くん意地悪か)


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