窓に叩き付けられる滴。
垂直面にぶつかることで物理的落下速度は相殺された。
衝撃に逆らえるほどの力が在るわけもなく。
速さを失った水滴はただ重力に従うのみ。
まぁ、それはあくまでも無機物に対する反応であって。
生身の俺には痛みを感じざるを得ない。
そろそろその感覚さえも麻痺しそうだ。
「このまま消えてしまえればいいのに」
「それは困るんだけど」
「……リョーマ」
「オレ、まだ先輩に勝ったことないんだから」
「……、それ俺のせいじゃないよね」
「だから先輩に居なくなられたら困る」
リョーマが眉間に皺を寄せて立っていた。
頭一つ分以上、下にある頭で俺を見上げて。
当然、傘をさしている。
跳ねる雨は降る雨と衝突して空中にはぜた。
雫と滴の飛沫。
陽が照っていたらさぞかし綺麗だっただろうに。
「ねぇ、リョーマ……」
唇が空気を振動させる。
俺の長年の望みを。
嗚呼、お前の返す言葉が手に取るように解るよ。
この首にその手をかけて
-さぁ、殺してみせて-
(……、先輩に勝ったらね)
(うん、楽しみにしてる)
(取り敢えず傘、入れば?)
(うん、ありがと)
(……はい、タオル。オレの制服濡らしたら承知しないから)
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