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「それじゃあ、二人ずつペアを作りやー」


授業中。先生の言葉が死刑宣告のように脳内で木霊した。
続々と周りがペアを作っていく中、俺はといえば早鐘を打つ心臓と浅くなる呼気を抑えるのに必死で。
ちらりと謙也を見れば心配そうにしつつも他の男子に手を引かれてペアを作っていた。
そういう根回しには抜かりない。

このクラスの男子は奇数。女子は偶数。

つまりは、休みが居なかった場合に一人があぶれる計算だ。
一人ぽつんと孤立した俺を女子は心配気に、男子はにやにやと面白そうに見てくる。
先生も毎度のことながら困った表情を浮かべていて、どこに入れたら良いか考え倦ねているようだった。
労るような先生の呼び掛けにも満足に反応出来なくて、ぐっと目元が熱くなる。

不味い。このままだと奴らの思う壺だ。
そう思うのだが、泣くなという意思に反して目の奥の熱さは増すばかり。
悔しい。手も足も出ず不甲斐なくやられている自分が。




「白石、こっち入りや」




そんな最中、唐突に発せられた男子の声。びくり、と肩が跳ねたのは反射だ。
しかし、その声はいつも絡んでくる男子達のものではなかった。
怖ず怖ずと声のした方を振り見て、仏頂面のみょうじがそこには居た。

いつも無関心で、傍観すらもせず。ただ、俺を空気のように扱っていた話したこともない奴。

隣には既にペアを組んだ明宮も居たから、一瞬躊躇う。
が、先生に背を押されてしまって仕方なしなしみょうじの横に腰を据えた。


「……な、なぁ…みょうじ」
「なん」
「何で、入れてくれたん? 俺なんか入れたら、自分ら後で……ッ」


続きを口にしようとして声が出なかった。
自分から言葉にしてしまったら最後、涙腺が崩壊しそうだったのだ。
そんな俺を特に気にした風のないみょうじは先生の話に書き消されそうな声音でぼそりと言う。


「なら、あいつらんとこ行くか?」
「ッ……ゃ、ゃ……!」
「だったら何も考えんな」


無意味や。

小さくだけれどはっきりと。真っ黒な眼でそう言った。
向かいの明宮がくすくすと笑いながら「みょうじやっさしー」と呟く。
にやにやとした笑みだけれど、そこに他の奴らが浮かべる揶揄は含まれていない。
例え含んでいたとしてもそれは俺には向けられておらず、みょうじに対してのからかい調である。
それを聞こえていないのか無視したのかみょうじは真っ直ぐ黒板を見ていた。




直線的交差は直角で90゜
-それは鋭角でも鈍角でもない-



(結局授業を通して彼の態度に変化見られず)
(凛とした彼の姿がひどく目に焼き付いた)


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