short | ナノ
肌を射すかんかん照り。
浜辺に刺したパラソルの下に居るにも関わらず暑い。
生温く微妙な加減で吹く潮風が全身を通り過ぎて行った。
シート越しの砂も熱を持っている。




「……あっつ」




波打ち際でわいわいと遊んでいるサエ達をぼんやり眺めた。
さっきまで皆で黙々と潮干狩りをしていたはずなのに。
今はアサリやハマグリ等が入ったバケツを一か所に纏めて、ビーチバレーに興じている。

元気良いなあ。あの元気さが羨ましい。

少しだけ感じた疎外感を紛らわすために砂を弄ぶ。
さら、掬い上げた砂が指の隙間から零れ降りて元の砂と同化した。


「……俺も混ざれたら、良いのに」
「――――……なまえ!」
「サエ? どうした?」
「なまえも一緒にやらないか?」


太陽に負けないぐらい輝かしい笑顔を向けるサエ。
彼はシートの上で体育座りをしている俺に対して手を差し出してくれた。
その手と顔を交互に見つめて、動く気がない俺にサエが浮かべたのは苦笑。
そして、痺れを切らしたのかガッと俺の左手首を掴んで半ば強制的に立たせ走り出す。


「ちょ、サエ……!」
「あんなとこに一人で居たってつまらないだろ!」
「そうだけど……っわ!?」
「、なまえッ?!」


不安定な砂に足を取られて、脚が縺れる。
俺の上げた声に反応したサエの瞳が大きく見開かれて。
気付いたら二人揃って砂の上にダイブしていた。

遠くから焦った声や心配する声が向けられて、自然と込み上げてきた笑い。
対するサエは不思議そうな表情だ。


「なまえ! サエ! 大丈夫なのねー?」
「おいおい、怪我とかしてねぇか?」
「っはは、大丈夫大丈夫。ほら下、砂だし」


よっこらせと爺臭い発言をしつつ身体を起こせば、サエが申し訳なさそうな顔をしている。
どうやら俺が転けたことを気にしてるようだ。
先に立ち上がっていたサエが今度は労わる様に優しく腕を引いてくれた。


「なまえ…ご…め、っ?」
「謝らなくていい。俺は嬉しいんだ」
「え……?」
「俺をここに連れ出してくれて」


謝罪を口にしたサエの唇を人差し指で制し、おもむろに振り返って視線の先は俺がさっきまで居た場所。
ぽつん、と。
人の居なくったそこは淋しげに潮風に揺られている。

そう。あそこから見た景色はどれも遠くて別世界で。羨ましくて。眩しかった。

太陽の照り付けと砂浜からの反射が眩しく、目を細めているとふっと辺り暗くなる。
驚いて振り向けば健太郎が立っていてその手には日傘。


「これがあれば問題ないですよね? なまえさん!」
「……ああ、そうだな。ありがとう」
「これでサエも全力で出来るな!」
「あ、こら! バネ……ッ!」


サエ、ここ来てからずっとなまえの方ばっか見てたのねー。
と微笑ましそうに笑う樹っちゃん。
その台詞にバネに突っかかってたサエが勢いよくこちらを振り向く。
口をパクパクと開閉させて、俺と目が合った途端みるみるうちにその顔を茹でダコにさせた。




真夏のアポロン
-燦々と暑く、熱く-



(サエ)
(……っぅ……な、なに……)
(頑張れ)
(! ……うんッ!)


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