short | ナノ
窓を開けて大の字で寝転ぶ。
暑い。たまに吹く風は体温とほぼ同じ温度なのだろう。
はっきり言って気持ち悪い。

チリンとお情け程度に鳴る夏の風物詩も苛々を助長させるだけ。
茹だるような暑さの中俺は恨めしそうにクーラーを睨み付けた。



自分は絶対つけたらんぞ。



無駄な決意を胸に抱き、無言(当然だが)を貫き通す機械との睨み合い。
しかしそれは母親の呼び出しによって終止符が打たれた。
どうやら俺に客人が来ているようだ。
開けっ広げの自室の入口を見やり身体を起こそうとして敢えなく断念。
全身が怠くて仕方がない。

再び床に寝転がり近くに放ってあったタオルを手探りで引き寄せて雑に顔を拭く。
そうすれば一時的に不快な汗が表面上から消え失せて、少しだけ満足。
そのままタオルを退けるのが面倒臭くなって、顔の上に放置した。


「あ"ー……つ"ー……い"ー……」


これは完全に寝る体勢だな。
なんて段々と思考能力が低下してくる頭で重いながら目蓋を閉じる。

一面が真っ暗な中。
この猛暑に負けずに活動する烏の鳴き声と自動車の走行する音とが遠くで混濁。
良い感じで眠れそうになったとき、またもや母親の呼び出しによって遮られた。
「あんたにお客さん言うとるやろ!さっさと降りてき!!」そう怒鳴り声を上げた母親も相当苛ついているようだ。


「今俺は死体やねん! 無理や!!」
「何バカな事言ってんすか……」
「バカとは何やねん! って、リョーマやったんか客て」
「……俺で悪かったすね」


この家に居ないはずのテノール。
タオルを退けて顔だけ上げる。

そこには憮然としたリョーマがポケットに手を突っ込んだ状態で俺を見下ろしていた。
部活帰りらしく汗を滴らせているその姿。
取り敢えずそのまま立たせておくのは気が引けたため、のそのそと起き上がって隣に座るよう促す。
存外素直に従ったリョーマは俺の隣にちょこんと座って。




「この部屋、暑い」




一言呟いた。
その瞬間に俺の決意とリョーマの要望が天秤にかかって、大きく傾く。
手を伸ばした先にはクーラーのリモコン。
ピピッとの電子音が鳴れば瞬く間にひんやりとした人工的な風が部屋に流れる。


「ねぇ……喉、渇いたんだけど」
「はいはい……ファンタでええよな」
「ん、」


小さく頷いたリョーマは俺の方は見向きもせず、足元に置いてあった今週のジャンプを手に取っていた。




地球温暖化促進中
-こういう事をするから気温が上がるんだ-



(ほれ、ファンタ)
(……痩せ我慢したって意味ないっすよ)
(せやな……あー……涼しいぃー……)


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -