short | ナノ


「なあなあ、謙也ぁ」
「……何やねん」
「何やねんちゃうわ! ちゃんと聞いてくれたん?」
「まあ、うん……聞いたで」


ほんま?! おおきに! と花を飛ばす勢いで笑顔を振り撒くのは親友の白石。
白石は現在絶賛片想い中だ。
今風に言えば――片想いなう。使い方が違う?知らんわ。
しかもその相手と言うのが。


「みょうじくん、何て言うてた?!」
「……料理が出来る子とかポイント高いよな、やて」
「やっぱりか……! みょうじくんも普通の男の子やったんやな」


そう、奴のいうみょうじとは男なのだ。
近くから見ようと遠くから見ようと、前後左右360゜どこから見ても正真正銘の男だ。
更に言えば、みょうじなまえは俺の幼馴染みだったりする。
そもそもどうしてこうなってしまったのだろうか。
一人で百面相して自分の世界に入ってしまった白石を横目に考える。

俺に他意などなく、ただただ純粋になまえに白石を紹介した筈だった。
周囲から聖書だ優等生だと持て囃される白石を普通の同級生として接してやれるだろう、と。
事実なまえは一線を引くことなく直ぐ様白石と仲良くなった。
嬉しそうな表情を浮かべなまえと話す白石に自身の考えは間違っていなかったのだと、安心したのも束の間。

いつの間にか奴のなまえへの眼差しが友人に向けるそれとは異なっていたのだ。
何故だ、解せぬ。
本人曰く「みょうじくんて、男前やんな」らしい。いや…知らんがな。


「謙也ー」
「ん? おお、なまえやないか。珍しいな」
「いやあ、英和忘れてもうて。持ってへん?」


噂をすればなんとやら。
話題の当人が自らのこのことやって来た。
いつも通りを装いながら横目で白石を見やり、瞬間後悔する。

瞳をきらきらと輝かせ、満面の笑みをなまえに向けていたのだ。
心なしかハートが飛んでいる気もするぐらい。


「……堪忍、俺も持ってきてへんねん」
「そか……白石は? 持ってたりせぇへん?」
「っへ? あ、も、持っとるで……っ! これやんな?」
「せや! おおきに、流石白石や。使い終わったら即行返しに来るな!」


言い終わるや否や、なまえは颯爽と教室を後にした。
辞書を忘れた、というのは嘘だ。白石の辞書を奴に貸すためにわざわざ吐いた。


「……謙也、ありがとな」
「ほんまやで……ええ加減告ったらどや」
「あ、かん! まだ、みょうじくんにつり合う男になってへん!」


先ずは肉じゃがを完璧に出来てからやな!と息巻く白石に頭が痛くならずにはいられなかった。




いい加減くっつけ
-どうせ両想いなのだから-



(なあなあ謙也ぁ……白石って、どんな子が好みなん?)
(……もう、お前から告ってまえや)


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