嘘つき

 大抵いつも笑顔でいる人って、無理してたりするもんなんだよね。まあほんとにそうしてる人、見たことないんだけど。……とはイーリアスの経験談である。見たことないなら経験談じゃないでしょう、それ。
 アメリアは考えていた。それが事実だとするなら、目の前で料理の献立について悩んでいるこいつは無理をしていることになるのだろうか。――無理。無理ってなにを? 憶測しか判断材料がないものを考えるのは無謀に近い。
 なら。

「サチ」
「なーに」
「今、嘘ついてる?」
「ウンッッ!?」

 面倒ね。直球勝負よ。

「騙してるようにみえる? 悲しいわあ、ボクってそんな風に見えてたんやねえ」
「そんな大袈裟な真似するからだけど」
「そんなそんなそんな、滅相もない、なーんにもない! 嘘つき狼じゃあらへんよ」

 口内に溜めていた息を噛み殺す。わからないけれど、まあいい。とりあえずは元に戻ろう。そう結論づけて、遠くに設置されたキャンプに戻ろうとして拳を作った。

「嘘つき」

 弁解するのに演技をするのね、貴方は。


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