シャーリィ強襲

「ぼ、僕たちどうなるんだろう。やっぱりフリッツさんのところに連行されちゃうのかな……」
「お腹空いた。チーズ、ない?」
「あ、ありません。大人しく待っていてください!」
「セニちゃんはこんなときでもマイペースだねえ……」
「――イーリアス、元気ぃ?」
「サチさん!」
「……!」
「のこのこと現れやがったな、教団兵さんよぉ」
「や〜、すまんなぁ。急に捕まえちゃって。ちょっと話したいことがあってなあ〜」
「イーリアスたちを教団本部に連れ戻すスケジュールでも発表しようってか? ついでに犯罪者に協力した傭兵を始末するとか思ってたり」
「そんなんじゃあらへんよ。でも一応、教団兵としてのメンツがあってなあ、捕まえなきゃ怪しまれる! って思ったんよ。――数日前、ボクらが検問敷いてたとこ偽装で突破したの、イーリアスたちやろ?」
「え! なんでわかったの!?」
「あは、やっぱり〜。不審者は取り調べせなあかんからな、仲良ぉしたくても捕まえさせてもらったんや。――本題はここから。ボクらルポン山道で働く教団員たちは味方やよ」
「……よく、わからない。わたしたちを捕まえたのに?」
「そうだぜ。滅人の味方っつっても、メリットがねーだろ」
「普通ならな」
「サチは変人だったの?」
「その言い方は悲しいなあ。まあ変人っちゃそうやけど――違う。ボクはわけあって、ある一国の王直々に依頼を受けさせてもろてる。その依頼を遂行するためにイーリアスたちが必要ってワケ」
「ええ、すごいねえ! どんな依頼なの?」
「イーリアスたちはどうして旅に出てたん?」
「え? ……僕がリュミエール様にそっくりだっていわれたから、リュミエール様と繋がりのある大精霊さんたちと会えばなにかわかるかなって……大精霊さんたちに会おうと……」
「それ。ボクも大精霊と会いたくてしゃあないんや」
「全ての大精霊と契約してくれって頼まれたわけ? ……もしそうなら、その王様は結構な欲深だな」
「どうして?」
「大精霊と契約し、精霊の長レナトゥスに会った者は願いを一つ叶えてもらえる。そういう決まりがあるんや。まあ、欲深といわれればそうやな。でも悪人じゃない」
「……家族の人が大変な病気で、そういう力がないと解決しない、とか?」
「おっ、なんでわかったん? イーリアスは頭ええなあ」
「本当にそうなの!? なら僕協力するよ!」
「イーリアスくんたちの目的と合致するし、彼がいいならいいんだけど、信用はできねえな。証拠を出してくれよ」
「なら、依頼主に会って確認してええよ。エンヨウっちゅう島国なんやけど」
「エンヨウ? ――イーリアスくん、本当にいいの? こいつは本当に信頼できる?」
「よくわかんない」
「イーリアスくん……」
「でも、困ってる人がいるなら助けたいよ。それに、サチさんがいたら教団員に捕縛されてるからって道中も見逃して――」
「あ、それはないと思うで。ボクらフリッツと戦ったやろ」
「えっ」
「フリッツに抵抗するイコール一一般教団員の裏切りってコト」
「ええー!? なんでぇ!? 手柄を横取りしたい教団員の策略ってわけじゃないの!?」
「イーリアスはたまに毒を吐くなあ〜」



「た、大変ですフ……サチさん!」
「なんやどうした」
「強襲です! 少女と巨大鳥が侵入――ぐわっ!!」
「! 伏せろ、イーリアス!」
「へ!? きゃーーー!?」
「避けられた、です……!」
「なになになに!? ウワッ、誰!?」
「わっ、かわいい女の子――いでで、アメリアちゃんやめいだ」
「ふざけるな。あの子は敵でしょ」
「リュミエール様、どうして……? どうしてリィのこと、他人を見るような目で見るの?」
「ぼ、僕はリュミエール様じゃないよぉ!」
「! 逃げないで! 泡沫に揺れる清流――〈泡沫〉!」
「きゃー!? 泡が目の前にたくさん……きゃー!!」
「きゃーきゃーうっさいわね。安心させてやるからアメリアのところにきなさい! ――猛追せよ、紅蓮の炎! 〈火球〉!」
「ひゃああ!」
「……! いやあッ!」
「ふん! 水が出るなら火で相殺すればいいのよ。大丈夫、イーリアス?」
「う、うん……。あの子、怖いよぉ……。なんか大きな鳥さん連れてるし……」
「ッ、エルー! リュミエール様を……、!」
「そうはいかへんよ、ええっと、シャーリィやっけ?」
「イーリアスくんを誘拐しようってんなら、オレ様たちが相手になるぜ。カワイコちゃん相手はちょーっと心が傷つくけど」
「……どうして、リュミエール様……シャーリィは、シャーリィはただ……っ。リィはただ、リュミエール様を返してもらいたいだけ! 一緒にいたいだけなのに――あなたたち、邪魔! リュミエール様を返してっ!」


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