プロローグ

※イーリアス視点

 目覚めた。眼前に岩人形(ゴーレム)。大口が、闇が、僕を飲みこむ――のだけは勘弁願いたい!
 ちんぷんかんぷんでいる間に食べられてゲームオーバー、なんて格好悪いことこの上ない。寸前で避け、追いかけられるたびに逃げ惑い、叫ぶ。助けてくれるひとはいませんか。
 必死に繰り出した言葉に反応してくれたのか、ひとりの女の子が僕とゴーレムの間に滑りこんだ。桃髪の美少女だった。担いだ大剣を振りおろされ――奴は呆気なく崩れ落ちていく。

「……だれ?」
「ぼ、僕はイーリアス。えっと、――あれ」

 崩れ落ちていくのは命を脅かす魔物だけでなく、僕の記憶もなのだと気づいたとき、ああこれが記憶喪失ってヤツなのかと理解した。
 理解はできても納得はできないから、これからどうしようと途方に暮れたのだけど。


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