船上での幕間

■セニ
「……♪」
「嬉しそうな顔してどうしたの?」
「イーリアス。……ファスターテ、暑かったから。ようやく別の大陸へ行けるって思って」
「茹でタコになっちゃいそうだったもんねえ」
「涼しかったの、エニュプニオンと、ルーメンがいた神殿ぐらい。……わたし、暑がりだったんだね」
「アルフライラではキャラクターが変わってたもんね。まあ、あそこは僕も勘弁してほしいけど」
「砂漠って、どうして生まれたんだろう。理解できない」
「ねー。僕も理解できないな」
「でも、ファスターテの賑やかな雰囲気は好き。壺や絨毯が浮いてたり、魔術がかけられた便利道具があったり……猫、かわいかったね」
「うん! ふさふさでかわいかったね」
「大人になったらルジュエにも行きたい」
「……それって、ガブリエーレさんが止めたから?」
「うん。子供は夜に寝て、大人は夜に起きる町なんでしょう。大人になったら、ルジュエの魅力がわかるかなって……イーリアス、どうしたの」
「いや、うーん……大人になっても、ルジュエはちょっと……どうなのかな……?」
「……?」

■ガブリエーレ
「あ、ガブリエーレさんが手紙を送ってる! ボスにこっそり報告してるんだ! 裏切り行為だ〜!」
「なんでそうなるかなイーリアスくん!? つーか裏切り行為を見たんだったらそんなに嬉しそうにしないの!」
「で、誰に送ってたの?」
「……言うと思う?」
「そんな態度とられたら、本当に密告してたんだって思っちゃうよ」
「ふっふっふ、なにを隠そう、オレ様は悪の組織の一員――」
「きゃー!」
「じゃなくて、友達に報告してたんだよ。今日はこんなことがあって楽しかったってさ」
「友達?」
「そ。うーん、言ってもいいかな……その友達、教団員なのよ」
「え!? それじゃ本当に密――」
「違う違う! そう勘違いされそうだから言いにくかったんだよ。……その子、まだ五歳だし、いい子だから、フリッツたちに言いふらすなんてことないぜ。手紙にも誰にも言わないでってちゃんと書いてるし」
「ほんと? なら信じる」
「ありがとな」
「五歳かあ……僕たちとも友達になれるかな?」
「なれるよ。きっと歓迎してくれる。会えるなら会いたい?」
「うん!」

■アメリア
「口開けて」
「あーん」
「……これは、だめ。これは大丈夫。魚は……今日食べてしまおうかしら」
「アメリアちゃん、ビーチェちゃん。なにしてるの?」
「イーリアス。食料の消費期限を確かめてたのよ。すぐに腐るのとそうでないのがあるから」
「マメだねえ」
「さっきまで砂漠の大陸にいたでしょ? 暑い場所にいると食べものって駄目になりやすいの。そんなもの食べたらお腹壊すでしょ。――ああ、今日は魚料理にするから」
「魚?」
「肉と魚は駄目になりやすい。今日の料理担当は誰だか覚えてる?」
「え? えーと……」
「ガブリエーレちゃんだよ!」
「そう。じゃあこれ、ガブリエーレに渡して。あと――もっと口開けて」
「あーん」
「えい」
「ふぎゃ!」
(ビーチェちゃんの口に手を突っこんでる……)
「――これ。ノーヴェで売ってたビーンズグミ。セニと一緒に食べたら」
「いいの?」
「魔術がかけられたものがあって、外れを食べると火を噴いたりするみたいだけど、まあ普通のお菓子だから」
「それは普通のお菓子じゃないよ〜!」


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