ひとコマのひめごと

 傍から見れば、僕ら二人は恋人同士のように見えるのかと考えて、心臓が一際強く鼓動する。津辻先輩にサプライズでプレゼントするため、僕のCDを買いに行こうとしている最中のことだった。

「CDを手に入れるだけじゃ物足りないし、ちょっとどこかでお茶でもしようか?」

 でも、フードで隠しているとはいえ、バレて大騒ぎになる可能性もあるし。
 そういって顎に手を添え、探偵と化した三留先輩を見、軽く笑みをこぼす。途端、どうかしたのかとうろたえはじめた先輩をなだめようと宣った。
 なんでもない、なんでもないけれど。

「三留先輩とこうしていれることが、すっごく、嬉しいなって……変やなぁ、僕」

 なんでもない今日がたまらなく愛おしいのだ、というにはまだ照れくさいから、単純な言葉で誤魔化しておく。
 誤魔化しきれなかった愛情が胸を侵食していくのを、僕の笑顔では止められそうにない。


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