律×メアリー

 鮮やかな赤紫のヴェールがひらりと風に踊った。同じ色に染められたドレスを摘まみ折って歩いてきたそいつのなんて綺麗なこと。夕焼けとグラデーションが重なって、どっちがどっちか混乱しそうになる。
 大人の色気も経験もなにもないくせに、今日この時間だけ、煽情的な雰囲気を纏わせるこども。経験はあれど重ねた年をなくしたボクも、きっと同じ空気に包まれているのだろう。

「踊りましょう。早く熟して、京のご飯、食べたいですし」
「そうだね。あいつの作る料理は、不本意だけど美味しい」
「手、取ってくれないんですか?」
「順番が後なだけだ。今取るよ。……綺麗だね」
「ふふ。律も綺麗、です」

 そのまま、日が落ちて一層輝き始めた晴れ舞台のもとへ向かう。
 自然と褒め言葉が出たのは、きっと、鼻をやられるような妖艶さのせいだ。



「女の子みたいできれいです!」
「なるほど誰に唆されたの桜汰だね桜汰だなあいつころす」
「ち、ちが……京です! あっ」
「へえ……。あの蓬餅なんてこと言ってくれるの。はー、ふふ、ははは、そう。ちまつりにあげてやる」
「やめてくださいやめてください! 冗談じゃないですよねそれ! わああああん、律ー!」


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