律×小春

「ん」

 半ば真っ白になった頭で、突然突きだされたクレープを視界に入れる。
 私から顔を背けながら、早くしなよと急かすように律くんが囁いた。

「早くって、なにを?」
「お前、鈍感? これも美味しそうだっていったのは小春でしょ」

 狐色の髪に隠された頬は、どことなく赤く染まっているような気がした。

「一口、先に食べろって言ってるの」
「……いいの?」
「これは命令。いい、じゃなくて食べるんだよ」

 律くんは私の方を向くと、クレープをより近く突き向けてくる。

「デート、してるんだから……これぐらい、許す」


[][目次][][小説TOP][TOP]
[しおりを挟む][感想フォーム][いいね!]
- ナノ -