デスゲームの黒幕に耳かきされる話【2】

■背景
突然デスゲームに参加させられた貴方。
数人が"処刑"され気が参っていた貴方のもとに、心配した彼が訪ねてきて……。
(元キャラ:犬飼ロク)



(個室内/ノック音)
ねえ、いる?
入っても大丈夫?

(扉を開けた貴方)
扉、開けてくれてありがとう。
……そんな、礼をいわれるようなことしてないよ。
隣、座ってもいい?

……よかった。
じゃあ、失礼しまーす。

(貴方の隣に座る彼/ベッドの上)
やっぱり、顔色、すごく悪い。
漫画でしか見たことがないってぐらい真っ青。
きみが部屋に戻る前もそんな感じだったからさ、心配になっちゃって……。
お節介だったらごめんね?

でも、仕方ないよ。
また"処刑"されちゃったんだもの。
気分だって悪くなるよ、あんなのさ。
……これで四回目。
黒幕はなにを考えてるんだろうね……。

(泣きだした貴方)
わっ!?
ちょ、ちょっとどうしたの……!?

(既に"処刑"された幼馴染の名前を呼ぶ貴方に)
……ごめん、思い出させた?
"きみは悪くない"?
そんなこと……僕のせいじゃん。
もう少し気を遣うべきだった。
こういうのが直らないんだよなあ……。

(わざと明るい調子で)
……僕がいえることじゃないけどさ。
リフレッシュ、しない?
そう、リフレッシュ。

きみのためになにかさせてよ。
……駄目かな?

(お礼をいう貴方に)
……よかった〜。
断られたらどうしようって思ってた。
僕の都合すぎるけど、気まずくなるの、嫌だったから。
……きみとはずっと仲良くしたいもの。

ふふっ。
じゃあ、ベッドの上に乗らせてもらうね。
頭、膝に乗せて。

("なにをするつもり?"と貴方)
なにって、耳掃除。
こんな狭い部屋の中じゃ、したくてもなにもできないでしょ。
きみの体を癒すことぐらいしかできないよ。

あ……恥ずかしい?
こういうの嫌だった?
それなら……。

("嫌じゃない"と慌てる貴方)
わっ、びっくりした。
あはは、すごい勢いで否定するじゃん。
なんか嬉しいかも。
きみに好かれてるって実感できて。

耳かき、得意なわけじゃないけど……。
少しでもきみのためになったら本望だよ。
……なーんて。へへ。

(右耳/耳かき開始)
ふふっ、すっごい溜まってるね……。
さくさく〜って音が鳴ってる気がする。
こんな環境だもん、自分の体を大切にしようって意識、向かなくなるよね。
……早くここから出れたらいいのに。

……なんで僕みたいな地味なやつが選ばれちゃったんだろうな?
僕、大学でも友達いないし、教室の隅のほうで黙ってノートとってるようなやつなのに。

("そこまで卑下しなくても"と貴方)
え〜? 卑下じゃないよ!
事実事実!
誇張も嘘も含んでないよ〜。

そこまで暗いやつってわけでもないし。
……多分。
ただ地味ってだけでさ〜。
地味なのが特徴みたいなものだから。

……あー、こういう損得にもならないのがいるとまた違うのかなあ?
濃い味つけを薄める感じ?

("きみは地味じゃないよ"と貴方)
……地味じゃない?
そんなあ、そんなことないよ〜!
きみに褒めてもらえるのは嬉しいけどさ……。
毒にも薬にもならないやつだよ。

そもそも特徴があったら地味じゃない?
……あははっ、確かに!

ふふ……。
きみってほんと、人のこと悪くいわないよね。
人柄が伝わるよ。

……うーん、もう少しかかるかな?
耳掃除続けるね〜。

(しばらく耳かき音/環境音、鼻歌、子守唄等を入れてもいいかもしれません)

……これでいいかな?
えーっと……この、ふわふわ?
なんていうんだっけ。
これで仕上げ、していくね。

(梵天の音)

はいっ、終わり!
あはは、なんか今日だけでたくさんありがとうっていわれてる気がする。
なんだかこそばゆいなあ〜。

左耳もするから、ごろんってしてくれる?
……ありがとう。
じゃ、やっていくね〜。

(左耳/耳かき開始)
("ここから出ようね"と貴方)
……うん?
…………うん。
全員でここから出ようね。

(黒幕なので濁している)
また誰かがいなくなるとか……耐えられない。
これ以上犠牲者が増えたら、僕……。
…………。

("苺パフェは好き?"と貴方)
……えっ? い、苺パフェ?
ふ、普通に好きだけど……。

きみは好き……だったよね。
まだデスゲームがはじまってなかったとき、たくさん食べてたでしょ。
二、三グラス平気で平らげてさ……びっくりしちゃった!
……でも、なんで急に?

("きみと食べにいきたい"と貴方)
僕と一緒に食べたいの?
えー、嬉しいな。
僕もきみと食べにいきたい。

でも、まずは脱出してからじゃないと。
だよね?

("うん、だから約束しよう"と貴方)
(貴方に裏切られた過去を思い出しながら)
…………約束?
約束、しようって。
……お前がそれをいうの?

(誤魔化すように)
……あ!
ううん、なんでもない。
ほんと、なんでもないよ?

("嫌だった?"と貴方)
ぜ〜んぜん!
嫌じゃない嫌じゃない!
むしろ、デートに誘われて有頂天って感じ!

気のせいだって。
だからそんな顔されるのやだな〜?
……しくったなあ。
ん〜〜……。

(耳かきを止め、貴方に手を伸ばす彼)
……ん。"約束"、しよう?
全員で黒幕をぶっ飛ばして、パフェ、食べにいこう。
脱出祝いってことでさ。

だから、ほら、指切りげんまん。
…………約束。
……指切った。

破ったら一生呪っちゃうかも。
そんなことできないけど。

(耳かきを持った彼)
……続き、しなきゃね。
失礼するよー。

(しばらく耳かき音)

……よし。
それじゃ、ふわふわ入れていくね。

(梵天の音)

……終わったよ。
どう、リフレッシュできた?
きみを癒せていたらいいんだけど……。

(眠そうにしている貴方を見て)
って、おーい……?
眠くなっちゃった?
眠ってもいいけどさ、このままじゃ僕、麻痺っちゃうよ〜……。

…………駄目だ、寝ちゃった。
え〜〜……。

(黒幕としての本性を見せて)
……はあ〜〜。
すやすや寝てるねえ……。
僕が黒幕とも知らないで、簡単に信用しちゃってさあ。
馬っ鹿じゃないの?

善人面して、ひとの"いいところ"しか見ないで。
自分もそうだって見せかけて、僕のことは裏切った。
お前のその"ひとのいいところ"……大っ嫌いだよ。

昔っから変わらない。
……ほんっとムカつく。

(貴方の髪を少しだけ強く握りながら)
はっ、いい阿呆面。
……ま、よく眠りなよ。
どうせ数日の命だ。
それまでは、お前と同じ"巻きこまれた側"でいてあげる。

……最後まで信じてよね。
僕の正体を知って絶望すればいい……!

だから、それまでおやすみ。
……きみと僕は"友達"だって。
馬鹿正直に僕を見ていてくれるでしょう?
ねえ、そうだよね……。


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