アケミちゃんと隠れんぼする話

■背景
彼女の依存にうんざりした貴方は、助けを呼ぶために近くの公園内の電話ボックスのもとへ向かっていた。そこに彼女が現れて……。
(元キャラ:指宿朱珠)
("アケミちゃん"という話を知っているとより楽しめるかもしれません)



(足音/カチカチと彼女の繋ぎ目がぶつかる音)
おーい、どこにいるの〜?
なんで隠れるのー。

ちゃんと出てきてお話しようよ。
ひどいよー。
ちゃんと説明してよー。

(公園内を探し回る彼女)
むー。
出てきてくれないなあ……。
ど・こ・に・い・る・の・か・な〜……。

ここかな〜?
それともここ?
ここにもいないな〜。
ん〜……。

(電話ボックス付近に貴方がいるのを発見し)
……みーつけたっ。
やっと会えたね!
もー、だめだよー。
こんな夜遅くに出歩いちゃ危ないよ?

(驚いて尻餅をついた貴方に)
わっ、なにしてるんですかぁ。
突然お尻ついちゃって。
土で汚れちゃうよ?
……ほら、手、掴んで。

(立ち上がった貴方を見て)
ふふっ、ふふふ。
人間の考えること、まだよくわからないなあ。
自分が困っちゃうこと、わざわざするなんて。
あなた、本当に面白いひと!

これだから、人間のこと知るのってやめられない。
もっともーっと知りたい。
あなたに教えてもらいたい……。
……だから、逃げられたら困るなあ。

ねえ、なんで逃げたの?
そんなことしても無駄だよ。
"私"がいること忘れちゃった?

プレゼントしたよね?
あなたが履いてるジーンズの右ポケットにある"それ"。
友達になった日に送ったものだもん。

忘れてた、なんていわせないよ。
……いうつもり、なかったみたいだけど。

("なんでわかるの?"と貴方)
ふふっ、変な顔!
なんでわかるんだろうって顔してるねー。
あなたが"私"を持ってるからに決まってるじゃないですかぁ。
……わからない?

私、見てたんだよー。
あなたが"私"を捨てようと考えてたところ。
神社の前で難しい顔してたよね?
"私"をじーっと見つめてたのも知ってるんだから。

捨てちゃだめだよ。
まあ、新しい"私"をあげるから、捨てられても構わないけど……。
でも、悲しいよー。

人間って、人からもらったものを大切にしないんだ?
それぞれ違うのかな?
不思議〜。

…………で。
なんで逃げるの?
まだ薄っぺらだけど、私にだって心はあるんだよ。
傷つくよー。

ねえ。ねえ。なんで?
いつもみたいに教えてよ。
"人間(あなた)"の気持ち、知りたいなー。

("重すぎる"と答える貴方)
……重すぎる?
重い……って体重のこと?
って、さすがに違うか。

……気持ちが?
なんともいえない圧を感じる?
自分以外にも人間はいる……?
…………離れたい?

…………うーん。
残念だけど、それは無理かも。
私、あなた以外の人はいらないから。
あなただけに教えてもらいたいの。

それを"重い"っていわれるぐらい、人間の真似、上手になってきたのかなー?
他人と楽しそうにお喋りしてるあなたを見たときの嫉妬も。
あなたをひとりじめしてるときの幸福感と独占欲も。
あなたに対する、どろどろして心地いい愛情も。
ぜーんぶ拾ってもらえてる?

そうだったら嬉しいけど……。
でも、だめだよ。離れないから。

ずーっとそばにいて、教えてもらうの。
人間のこと、たくさん、たくさん……。
ふたりでいればずっとふたりきりだよ。
……私だけを見ていてほしいなー。

……"私"。
捨てないでいてくれたみたいだけど。
心変わりしないでね。

(貴方に向かって歩くたびにカチカチと音が鳴る/貴方の耳元で)
……次、"私"を捨てたら殺すから。

(貴方から少し離れて)
こんなところで話しているのもなんだし、あなたの家にいきたいなー。
すぐ近くだったよね?
掃除手伝ってあげる。

(貴方の腕に絡んで)
……ぎゅー。
……ん? 抱きついてるんだよー。
この前見た二人組の人間がやってたの。
覚えたことは実践しなきゃ。

私も、"私"も、ずーっと一緒。
あなたが死ぬまで、永遠に。
毎日いろんなこと教えてね。
……まずは明日から。ね?


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