クールビューティーなリンフォンとデートする話

■背景
ある呪物の付喪神である少女とデートすることになった貴方。
彼女との散歩中、古いアンティークショップを見つけて……。
(元キャラ:ヘレナ)
("リンフォン"という話を知っているとより楽しめるかもしれません)



(カフェ)
待っていたわ。
レディを待たせるだなんて、いけない人。
連絡をもらったときから楽しみにしていたのよ?
遅刻したぶん、満足させてね。

("で、どこ行くんだっけ?"と貴方)
さあ、どこに行きましょうか?
満足させてねとはいったけれど……。
アナタの楽しそうな顔を見れれば充分なの。
ワタシが望むものはなにもないわ。
……ノープランでごめんなさい?

("とりあえず散歩しようか"と提案する貴方)
あら、エスコートしてくれるの?
ふふ、嬉しい……。
惹かれる場所を見つけたら入りましょ。
アナタの思うがままに、ね。

(散歩中)
見て、すぐ近くに鳥が止まっているわ。
首が忙しなく動いていてとってもかわいい。
川の流れも綺麗……。

子供たちも元気ね。
学校に向かっているのかしら。
人間って本当に感情豊か。
ワタシには持ち得ないものばかりだわ。

……それとも。
アナタがそばにいるから色づいて見えるのかしら。
きっとアナタにとっては、ワタシが新鮮に感じているもの全て、"なんでもない"景色なのでしょうけど。

("そんなことない"といった様子の貴方)
……そうでもなさそうね。
ワタシとの"デート"、そんなに嬉しいの?
ふふ……ワタシも同じ気持ちよ。

(古びたアンティークショップを発見する二人)
……あら、ずいぶんと古びたお店。
見たことのないものがたくさん並んでいるわ。
ワタシが"いた"場所にそっくり。
アンティークショップっていうのかしらね?

……おねだりしても?
一つだけ、望みたいことを見つけてしまったわ。

ワタシ、あの店に入りたい。
……どう?

(承諾する貴方)
ふふっ、ありがとう。
どんな掘り出しものがあるか楽しみだわ!

(店内に入る二人)
埃の匂いがするわね……。
古本屋と同じ匂い?
へえ……これがそうなの。
確かに、本が多いから、同じ香りがしてもおかしくはないけれど……。

あっ、うふふ。見て?
ゲームカセットがあるわ。
どのぐらいの年代のものなのかしら?
野球のゲームみたいだけれど……当時のヒット作だったりするのかしらね。

(思うところがあるように)
他には〜……あら。
……とても大きな絵画。
魚が描かれているのね。
…………物騒なお顔。

(自分の腕を見つめる彼女)
……魚……。
……いえ、なんでもないのよ。

なあに、ワタシの腕が気になるの?
手袋をつけているから?
そう……。
…………この下……見たい?

("見せてくれるなら"と貴方)
うふふっ、正直な人は嫌いじゃないわ。
けれど、ごめんなさいね。
アナタは特別だもの。見せてあげたいのだけど、こればかりはできないわ。
……アナタにこそ見せたくない。

……この下には、不完全な"ワタシ"が広がっている。
"魚"になる前に捨てられた証があるの。
背中……魚のヒレが見えるでしょう。
立派だと思う?

("立派だ"と答える貴方)
まあ、うふふ。
お世辞でも嬉しいわ。
そう、立派よね……。
手袋で隠しているところ以外は。

もうすぐで完成するはずだったの。
あと少しで完成してくれるはず、だったのよ。
熊、鷹ときて……最後は魚になるはずだった。

だけど捨てられてしまった。
新聞紙で包まれて、無数のガムテープに巻かれて……。

ぽいっと。
ゴミに出されちゃった。
ふふ。

それから人間を真似た姿になって、こうしてアナタのそばにいる。
アナタがワタシを見つけてくれたこと、とーっても嬉しかったのよ。

この人はどうだろう。
今度こそ"完成"させてくれるのかしら。
魚に変身させてくれるのかしらって。

…………ねえ。
ワタシ、アナタに期待しているのよ。
彼方まで連れていって。
……おねがい。

完成したら、手袋は必要なくなるわ。
そうしたら、この下、嫌というほど見て構わない。
いいえ、むしろ見てほしい。
完全になったワタシを最初に見るのは、アナタであってほしいの。

(調子を変えて)
……でも、そうね。
今は"彼方"でない場所に連れていってほしいわ。
だってデート中なんだもの、ね?

そろそろおいとましましょう。
ねえ、次はどこに行く?
アナタと一緒なら、どこに行ってもきっと楽しいわ。


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