バイト先の先輩に耳かきされる話 ■背景 夏休みの間、南方の旅館でバイトをすることになった貴方。 そんな貴方の歓迎会で飲みすぎたバイト先の先輩である彼が、介抱してくれたお礼に耳かきをしたいといってきて……。 (元キャラ:臍緒岬) ("リゾートバイト"という話を知っているとより楽しめるかもしれません) ■設定 貴方:バイト先の歴史に興味がある。ラップ音等が聞こえるような気がするも、あまり気にしていない。 彼:バイト先の先輩。大学三年生。その正体は、かつて貴方と同じようにバイトしにきていた青年と青年を利用しようとした旅館の女将が共存している二重人格者。 この子:女将の子供だったもの。 ※ (旅館の廊下/酔っ払っている彼を担いで寝室へ向かっている貴方) あ〜……頭痛い……。 すまないねえ、介抱してもらっちゃって。 酒に呑まれちゃ世話ないよ。 かわいい後輩の前とはいえ、調子に乗るもんじゃないね……。 (寝室の中に入る二人/布団にダイブし頬擦りをする彼) あ〜〜、布団、気持ちいい……。 んん〜……はあ……。 (彼に水を渡す貴方) ……ん、なんだい? 水……持ってきてくれたのかい。 ありがとう。気が利くねえ。 (水を飲む彼) ……ぷはっ、生き返る〜。 頭痛もいくらかマシになったよ。 本当にありがとうね。 代わりといってはなんだけど、明日はお前さんが暇になるぐらい手伝ってあげるから。 まあ、元よりそのつもりだったんだけどね。 まだ仕事、覚えきれてないだろ? 今日入ったばっかりだもんねえ。 お前さんが一人前になるまで、俺が全力でサポートするよ。 目指せ、一夏のプロアルバイター! ってね。 借りはちゃあんと返さなきゃいけないし。 ……ふふっ。 (貴方をまじまじと見つめる彼/少し眠たげ) ん〜……。 んん〜……ふ、ふふ……。 ("なに?"と貴方) ……ああ、ごめんね? 疲れてないかと思ってね。 観光客相手の接客業、しかも初日だ。 へとへとだろう? (少し眠そうに) うん、だから……。 そう……だから〜……。 …………。 (貴方を押し倒し、自らの膝に乗せる彼) えいっ。 ……あはははっ、びっくりさせたかい? ごめんごめん。 (貴方の髪をなでる彼) ……だから、ね。 お前さんのこと、癒させてくれないかい。 先輩にいい顔させておくれ。 ね、お願いだよ……。 (承諾する貴方) ……ありがとう。 お前さんは本っ当にいい子だねえ……。 (近くの棚に手を伸ばす彼) じゃあ……。ん〜……よしっ。 埃もないね。うんうん。 ……ん、これがなんだか気になるのかい? 最近の若い子は見たことないのかねえ? 耳かきっていうんだよ。 これでお前さんの耳を掃除するんだ。 ……不安そうだねえ。 大丈夫、痛くないよ。 俺、耳かきには自信あるんだ。 さ、安心してお眠り……。 (右耳/耳かき開始) (気になることがあって目を開けた貴方) ……おや、お眠りといったのに。 どうかしたのかい。 ("昼間と雰囲気が違う気がする"と貴方) 雰囲気が違う? 俺の? ……そうかねえ、気のせいだよ。 それに、バイト中なら態度も変えるもんさ。 違うかい? (誤魔化すように) …………あ〜……。 ……そういえば、だけどさ。 お前さん、どうしてここにきたんだい。 やっぱりあれかい? ナンパ目的だったりするのかい? ここは"そういう"名所だからねえ。 お前さんも開放的な気分に……。 え、違う? この地域に伝わる歴史に興味があった? ああ……なんだっけねえ。 臍の緒をお守りとして持たせていたんだっけ。 ("そうそう!"と興奮気味に喜ぶ貴方) ……ずいぶんと嬉しそうだねえ。 ふーん……。 ふふ、それじゃあ今度博物館にでも行くかい? お前さんが喜びそうなもの、たくさん見れるよ。 ……かわいい顔するねえ。 そうだよ、デートに誘ってるんだ。 休みになったら一緒に行こう。 おにぎり作ってきてあげる。 (しばらく耳かき音) ……はい、終わり。 梵天で掃除するからね。 ("梵天?"ときょとんとしている間に耳掃除をされ驚く貴方/梵天の音) 驚いた? すまないねえ。 そうか、梵天も知らないのか……。 見えるかい? ちょっと見えづらいかね……。 (耳かきを貴方の前に持ってくる彼) これならどう? さっきはこの白いもふもふを使ってたんだ。 梵天、っていうんだよ。 ふふ、少し博識になったところで、だ。 左耳を掃除するから、俺に向き直ってくれるかい。 ……っと、その前に。 (息を吹きかける音) ……ふっ、あはは! ちょっとした悪戯さ! びっくりした? (むっとしながら彼のほうに向き直る貴方) ふふふ、ごめんねえ。 つい出来心で……。 拗ねてるお前さんもかわいいねえ。 ふふ、ふ……。 (眠気が限界な彼) ……ふ……ううん……。 うう……酔いが、回っ……。 …………ね、む……。 (ここから"青年の人格"に切り替わる) …………あ……。 おれ、喋……取り戻せたんだ……! (貴方に気づいた彼) あっ……えーと……。 ("耳かきしないの?"と聞く貴方) み、耳かき……? あ、ああー……うん、うん。 ごめん、酔いが回ってぼうっとしてた。 じゃあ、失礼しまーす……。 (左耳/耳かき開始) ……あ、あのさ。 バイト……どう? 嫌なこととか、変なこと、とか……ない? ("まだ初日だよ?"と不思議がる貴方) ……入ったばかりなの? あ、いや。なんでもない。 ……初日っていってもさ。 勘が働くことってあるだろ? だから、その……。 ("気になることがあるかも?"と貴方) ……気になることが、ある? 爪で引っかくような音……。 隣の部屋が、うるさい……。 うるさいって……呼吸、とか? ……そう、なんだ……。 ("壁が薄いのかな"と貴方) ここ、古いからさ……壁、結構薄いんだよな。 改善も期待できなくて……。 どうしても我慢できなくなったら、遠慮せずいってくれ。 できる限りのことはするから。 (小声で) あの人、次はこの子を……。 ……守らなきゃ。 おれみたいには、絶対に……。 (彼を不思議がる貴方) ……ごめん、またちょっとぼうっとしてた。 耳かき、続けるな。 (しばらく耳かき音) ……梵天、っていうんだっけ? これ、入れるよ。 動かないで……。 (梵天の音) ……はい、終わり。 起き上がっていいよ。 ("悪戯しないの?"と聞く貴方) ……えっ? い、悪戯……? ……えーっと……耳に……? し、したほうがいい? ("しないでいい"と慌てる貴方) え〜? そんな慌てられると、なんか、なあ……。 (息を吹きかける音) 悪戯、したくなるって。 ……へへっ。 (起き上がった貴方に向けて真剣に) …………あの、さ。 ……突拍子もないこと、いうんだけど……。 ……"俺"に、気をつけてほしい。 おれのいうこと、聞かないで。 "俺"を……信用しないで。 おれがいくらいいやつに見えても、それは全部偽物だから……。 おれと同じにならないで。 おね……が……い……。 (ここから"女将の人格"に切り替わる) ……今、あたし、なにして……。 …………あ〜。 すまないねえ、ぼうっとしていたみたいだ。 本当に、飲みすぎはよくないねえ。 どう? 俺の耳かき、気持ちよかった? (うなずく貴方) ふふ、そうかい。それはよかった。 今後ともご贔屓に? ……なーんてね。 うーん……頭、すっきりしてきたよ。 そろそろ寝るとするかねえ。 お前さんも自分の部屋にお戻り。 それとも一緒に寝る? ……嘘だよ。ふふっ。 じゃあ、また明日。 大変かもしれないけど、一緒にがんばろうね。 ……おやすみ。 (貴方が部屋から出ていったあと) ……"あの子"に余計なこと、いわれたかな。 どうしてわかってくれないかねえ、ぜーんぶお前さんのためなのに。 ……お節介なのはわかってるけれど。 (遠くからカラスの鳴き声が聞こえてくる) "この子"も友達がほしいみたいだしね? どうにかしてここに留まらせなくちゃ。 "この子"の声が聞こえるみたいだし、きっとすぐに引きこめるはずだ。 ……ふふ、嬉しそうだねえ。 あの子が友達になってくれたら、あたしも嬉しいよ……。 ああ、早く、こっちにおいで。 あたしたちとひとつになろう。 ずーっとこのリゾートで、一緒にいようね……。 [前][目次][次][小説TOP][TOP] [しおりを挟む][感想フォーム][いいね!] |