北海道訛りの少年と電話する話

■背景
変な時間に起きてしまい、早朝になっても眠れない貴方。
友人である怪異の少年にショートメッセージを送ったところ、返事がきて……。
(元キャラ:霧岳稚勝)
("北海道のヒグマ"という話を知っているとより楽しめるかもしれません)



■原文
(電話の音)
なしたの、こったら時間さメッセージ送ってきて。
まだ明け方だべ、早起きだなあ。

……眠れんの?
もう、どうせまた寝る前に携帯ちょしてたんだろ。
そういうのよくないべさ。
風呂さ入ったら、なんもしないですぐ布団かぶったほうがいいべ。

まあ、眠れんもんはしゃあないべか……。
……決めた! 眠くなるまで話し相手さなるべ!

("貴方は眠くないの?"と貴方がいう)
おれなら大丈夫。熊さ怪異だってこと知っとるしょ?
薄明薄暮性……だっけ。この時間さ、頭、すっきりするから。
目ぇ冴えて困るぐらいだべ。

それにさ、せっかくメッセージ送ってくれたんだ。無碍になんかできねぇ。
おめぇさんさひとりじめできるわけだし……。
んーん、なんもない!

……ところでさ、今、どこさいるん?
なにしながら電話してるん?
体さ起こしてるなら寝たほうがいいべ。
眠くなってきたらすぐ眠れるから。

……えーっと……。
はは、いざ話すってなると、全然思いつかんね……。
なに話すべか……。

("この空気がはじめて会ったときと似てる"といわれ)
……はじめて会ったときさ似てる?
ああ、肌寒いもんなあ。
そうだべな、あのとき、霧がかかってたから……。
じんわり体さ冷えてくこの感じ、懐かしい。

あー、思い出してくるべ。
おめぇさはじめて見たときんこと……。

ざく、ざく……って、土を踏む音さ聞こえてきて……。
澄んだ山の匂いに人里の香りさ混ざって……。
顔さ上げた瞬間ビビッときた。

おれん手足、熊と同じだろ?
それがぶわっと逆立って……。
運命だ……って!

にへ、にへへ……。
あのときから誓ったんだ。
おめぇを傷つけたくない、傷つけさせない。
おめぇさんさ害するやつら、全員……。

(無理矢理話題を変えて)
……なあ、どうした?
さっきから黙っとるけど。

あっ、もしかして眠れそう?
ならよかった!
あとは目を閉じればいいだけだべ!

(貴方の様子を察して)
……なんか、全然眠くなってなさそ……。
なして? もうだいぶ話したのになあ。
おかしいな……。

……あっ。
じゃあ、じゃあさ。
今からおれ、おめぇんさ家行くべ!

本末転倒だけどさ、どうしても眠れんならベッドさ離れたほうがいいって聞くし。
自然と眠くなるまで、二人でココアでも飲もう。
温かいものさ飲むのもよさそうだし。
ね、そうしよ!

(眠れなさそうだと判断した貴方が承諾し)
むふふ、ほんと? やった!
じゃあ、今から向かうから。待っててくれな。

……うん? チョコ?
平気平気。熊さ怪異だけど、熊そのものじゃないから。
心配してくれたんだべか?
おめぇさん、本当、優しいな……。

……へへ。
じゃ、いったん電話切る。
すぐ行くから!

(通話終了)
……はあ〜あ……!
ほんっとにめんこいなあ……!

本当はおれじゃなくて、あの子さきてくれればいいんだけど……。
神隠しなんてしたら嫌われる。
あの子にも人間としての生活さあるし、無理強いは駄目だ。

……したら、排除しなきゃ。
二人きりさなれないかわりに、おれがみーんな、この爪で……。

……はあ、はは。早く行かなきゃ。
あの子さ待ってる!



■翻訳版
(電話の音)
どうしたの、こんな時間にメッセージ送ってきて。
まだ明け方だよ、早起きだね。

……眠れないの?
もう、どうせまた寝る前に携帯いじってたんでしょ。
そういうの、よくないんだからね。
お風呂に入ったらなんにもしないですぐ布団をかぶったほうがいいよ。

まあ、眠れないものは仕方ないけどさ……。
……決めた! 眠くなるまで話し相手になってあげる!

("貴方は眠くないの?"と貴方がいう)
おれなら大丈夫。熊の怪異だってこと知ってるでしょ?
薄明薄暮性……だっけ。この時間は頭がすっきりするんだ。
目が冴えちゃって困るぐらいだよ。

それに、せっかくきみがメッセージしてくれたんだもん。無碍になんてできないよ。
きみをひとりじめできるわけだし……。
ううん、なんでもない。

……ところでさ、今、どこにいるの?
なにしながら電話してるの?
体を起こしてるなら寝たほうがいいよ。
眠くなってきたらすぐ眠れるでしょ?

……えーっと……。
あはは、いざ話すってなると全然思いつかないね。
なに話そうか……。

("この空気がはじめて会ったときと似てる"といわれ)
……はじめて会ったときと似てる?
ああ、肌寒いもんね。
そうだよね、あのとき、霧がかかっていたから……。
じんわりと体が冷えていく感じ、懐かしいよ。

あー、思い出しちゃうな。
きみをはじめて見たときのこと……。

ざく、ざく……と土を踏む音が聞こえてきて……。
澄んだ山の匂いに人里の香りが混ざって……。
顔を上げた瞬間ビビッときた。

おれの手足、熊と同じでしょ。
それがぶわっと逆立って……。
運命だ……って!

えへ、えへへ……。
あのときから誓ったんだ。
きみを傷つけたくない、傷つけさせない。
きみを害するやつら、全員……。

(無理矢理話題を変えて)
……ねえ、どうしたの?
さっきから黙ってるけど。

あっ、もしかして眠れそう?
ならよかった!
あとは目を閉じればいいだけだね!

(貴方の様子を察して)
……なんか、全然眠くなってなさそうだね。
なんでかな? もうだいぶ話したのになあ。
おかしいな……。

…………あっ。
じゃあ、じゃあさ。
今からおれ、きみの家に行くよ!

本末転倒だけどさ、どうしても眠れないならベッドから離れたほうがいいって聞くし。
自然と眠くなるまで、二人でココアでも飲もうよ。
温かいものを飲むのもよさそうだし。
ね、そうしようよ!

(眠れなさそうだと判断した貴方が承諾し)
えへへ、ほんと? やった!
じゃあ、今から向かうよ。待っててね。

……うん? チョコ?
平気平気。熊の怪異だけど、熊そのものじゃないから。
心配してくれたの?
きみって本当に優しいね……。

……へへ。
じゃ、いったん電話切るね。
すぐ行くから!

(通話終了)
……はあ〜あ……!
ほんっとにかわいいなあ……!

本当はおれじゃなくて、あの子がきてくれればいいんだけど……。
神隠しなんてしたら嫌われちゃう。
あの子にも人間としての生活があるし、無理強いはできないよね。

……だから排除しなきゃ。
二人きりになれないかわりに、おれがみーんな、この爪で……。

……はあ、はは。早く行かなきゃ。
あの子が待ってる!


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