酒呑童子と月見をする話

■背景
中秋の名月が終わった数日後、夜に来客を迎えた貴方。その客は貴方の友人である酒呑童子で……。
(元キャラ:神酒)



(チャイム音が何度か/扉を開ける音)
むふ、慌てた顔をして……少しぐらいゆっくり歩いてもバチは当たりはせんよ。
そんなに儂に会いたかったのかの? 愛いやつじゃの〜、ふふふ。

不思議そうな顔をしておるなあ。
なんじゃ、まず玄関を訪ねるのがニンゲンの常識ではないのか?
儂はそれに倣っただけじゃよ。こんなことせずとも、霊術で簡単に出入りはできるがな……。
お主の驚く顔が見たかったのじゃ。ふふふ、目論見通りじゃの!

う〜、さぶっ。残暑も消え去ろうとしておる。
ずーっとここで待たされるのは勘弁じゃ、中に入れておくれ?
……ありがとう。では、共に参ろう。

(貴方の自室にて)
うふふ、お主の部屋は居心地がいいの〜!
ほれ、このクッション、儂だぁいすきなんじゃ。
もちもちもふもふしていて、頭を沈めるだけでたまらん。

……む? これは知らんもんじゃな。新しく買うたのか?
ふーん、そうなんじゃの〜。お主、毎度のことながら趣味がいいのう。
次来たときもきっと、新しい小物が増えているんじゃろうな。

(貴方に寄り添って)
ん〜、でも……お主が選んだ小物もいいがの……。
一番はお主じゃなあ。そうじゃろ? え、違う?
え〜? 儂の好みにケチをつけるのかの。ひどいやつじゃ。しくしく……。

(嘘泣きをやめて)
年下が過度に謙遜するでない。卑下となってしまうぞ?
なにをいってもいわれても、儂にとってお主は"なんば〜わん"で"おんり〜わん"じゃ。

……おっと、これ以上は聞かないのじゃ。
儂がお主を評価している、その事実だけで充分、じゃろ?

(貴方との距離を狭めて)
……ところで、お主。
なにかいうことがないかのう?

儂、とーっても羨ましかったんじゃぞ。
あの日はずーっと一人で……お主がきてくれると信じて待っておったのに……。
きっとおいし〜いお団子、食べたんじゃろうなあ……。
ぼけもない大層立派な月を見ながら、動画サイトを見るなりして楽し〜く過ごしたんじゃろうなあ……。

……そうそう、お月見。中秋の名月じゃよ。
顔が青くなっておるの。さては気づいたな?
……そうじゃよ、儂の誕生日。祝い事に駆けつけないとは悲しいのう。

あ〜、お主と二人で月見、したかったなあ。
お主と"二人っきり"で月見、したかったなあ〜……?

……食べてない? 今日月見をする予定だった?
ふーん……? なら、今からできるのう?
美しい月を共に見ようぞ。なあ?

(声色を明るくして)
そうと決まれば酒じゃなあ、酒!
驚いてどうしたのかの。
儂は酒呑童子じゃぞ、酒という酒を浴びるほど飲むのは当然じゃろうが。

ああ、でも神便鬼毒酒だけは敵わん。
あれは鬼にとって毒じゃからな。儂とて例外ではない。
一滴口に入れたらすぐに麻痺してしまう。困ったものじゃよ。

ほれ、ほれ、お主もぐいっと。
……大丈夫? そうか、お主と杯を交わしたかったんじゃがの。無理はさせられん。

なら、一人だけ酔わせてもらおう。
ふふっ、酒には強いんじゃがの、すーぐ回ってしまうかもしれんなあ。
お主という最高のつまみがあるからの……。

(貴方がテーブルに月見団子や食事を用意し)
む……。ふふ、気が利くのう。
ならば、どれ、団子を一つ……ん〜っ、美味じゃの〜!
どこで買うてきた? 近所のスーパー?
はああ〜……現世の発展具合には目を見張るのう……。

(甘えた声で)
……なあ、なあ?
さきほども言うたがの、儂、誕生日じゃったんじゃ。
ニンゲンは、誕生日になったら"ぷれぜんと"を捧げるんじゃろ。
いいたいことわかるよなあ……?

ふふふっ、そうじゃそうじゃ!
そうしてくれないとなあ?

(貴方との距離を狭めて)
と、いうわけでじゃ。抱擁しておくれ?
……なんじゃ、嫌なのか?
儂とお主の仲じゃと思っとったのになあ……。

(慌てた貴方が嫌ではないと口に出し)
……ふーん……ふ、ふふふ……。
そうか、嫌じゃあないんじゃなあ。拒むことはないんじゃな……?
儂のことが、好き、ってことじゃな?

……ふふふ! お主、慌てすぎじゃぞ。
そうかそうか、儂のことがだーいすき、なんじゃなあ〜……!

なら、早く"ぷれぜんと"を渡さないとな?
なーに照れとるんじゃ、今更じゃぞ。ほれ、近う寄れ。
……ぎゅー。

んん……ふふ、あたたかいのう……。
じゃが、まだまだ足りんな。月見ははじまったばかりじゃ。
飽きるまでつきあってもらうぞ。いいな?
……いい返事じゃ!


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