きさらぎ駅に迷いこんだところを謎の青年に助けられる話 ■背景 学校/仕事の帰りに駅に乗っていたところ、いつまで経っても目的地に着かない。 見知らぬ駅で降りた貴方が途方に暮れ、仕方なく線路を歩いていると謎の怪物に襲われた。 そんなとき、謎の青年が貴方を助けて……。 (元キャラ:駅長さん) ※ (なにかが斬られる音/ひとりごと) まったく、"お客様"に手を出すなんて……本当にお前たちは頭が足りないやつらばかりですね。 ……失せろよ"野良"ども。 (貴方に振り向いて) 怪我はありませんか? ……よかった! 貴方に無礼があったらたまりませんでした。 たった一人でさまよって、きっと心細かったでしょう。でも大丈夫、私が貴方を守ります。 未来の大切なお客様ですもの、"ここ"にまたきたいと思っていただけるようにしなければ。 ここには生者を襲う野良がたくさんいます。 やつらは怪異の端くれ、貴方のような方を見つけたら見境なく襲ってくる。 危険なので、私から離れないでくださいね。 (貴方の困惑している様子を見て) うふふ、心配ですか? 大丈夫! 私、"ここ"ではお偉いさんなんです。 私といるだけで大抵の野良は、知能が低くとも危険を察知して避けていきますし……。 それに私、とーっても強いので! ここにいる怪異たちなら全員"おいた"できちゃいます! ……え? 違う? ……私? (貴方は誰か、ここはどこなのかと問われ) ああ、そうでした。普通は自己紹介をするものでしたね。 改めまして……といいたいところですが、私、名前がないんです。"ここ"にある駅の長をしています。 おや、駅の名前が知りたいんですか? うふふっ、本当ですか? 嬉しいです! ここは、きさらぎ駅。 かたす、やみ、あまがたき……数々の"異界駅"の異界が合わさってできた空間です。 私はここで、いずれお客様となる、寿命を全うした生者の方々をお待ちしております。 なので、貴方が野良に襲われていたとき、心臓がぎゅ〜っと絞られてしまいそうでした。 ここの電車を利用される際は、気持ちよくご乗車していただきたいですから。 ("いずれ"とはどういう意味か問われ) ……ええ、はい、"いずれ"、です。 私が運転する電車は死者専用ですからね。貴方は生者でしょう? ご乗車するにはまだ早い。 それに、私、運転が少し荒いみたいで……。 もし生者の方がご乗車されたら危険すぎると、お客様からよくクレームをいただくのです。 確かにスピードを上げがちですが……早く目的地に着いたほうがいいですよね? ……っと、脱線してしまいましたね。 残りの話は歩きながら……。現世まで送ります。 なので、ひとまず構内へ出ましょう? 危ないので、もう線路の上は歩かないでくださいね。 (異界内を歩く二人) ……いずれ、といいましたが。 本来貴方がここにくるのはおかしいんです。 だって貴方は生者ですから。亡くなられていないのに死後の世界にくるなんてありえないでしょう? ありえない話、なのですが……。 たまに貴方のような方が死後の世界に誘われてしまうことがあるんです。 原因は様々ですが、多いのが怪異が生者を誘うパターンですね。 貴方の場合、野良たちに攫われてしまったんでしょう。 太鼓と鈴の音が聞こえませんでしたか? それは野良たちの求愛の証です。 ……ふふ、求愛といってもかわいいものですよ。友達になろう、ぐらいの意味合いです。 (トンネル前に着いた二人) ですが、やつらは加減を知らないので……。 ……あ、つきました! ここから現世に帰れますよ。 不安にならないで、ちゃんと貴方がいるべきところへ戻れます。 ……もしかして、怖い……ですか? 確かに、こ〜んなに長くて暗いトンネル、一歩入るだけでも勇気がいりますよね。 それも心配いりません! 私も一緒に入りますから! というより、私が補助しないと帰れないといいますか……。 例えば、行ったことのない場所に行くときにナビを使うでしょう? それと同じです。 "帰りかた"がわからないとどうにもできません。 だから、私が助けます。貴方は私のいうことを聞くだけでいい。 ……いきますよ? 目を閉じて。 ……トンネル内を歩きますから、危険なので私と手を繋いでください。 目を閉じることが重要なんです。"ここ"がどこだかわからなくなる、境界線を曖昧にすることが大事で……。 トンネルに限らず、井戸、辻道、橋の下……至るところに"境目"があるものです。 ここと現世を繋ぐもの……そこから、貴方がいるべき場所へ帰るのです。 (エンジン音or車の走行音) ……車の音が聞こえてきますね。 目を開けてはいけません。応じてもなりません。 これは野良の罠です。もし車に乗れば、貴方も怪異になってしまうでしょう。 ただ、先だけを見据えて。 ……帰れると信じて歩き続けて。 (小声で) さようなら。 ……ご乗車をお待ちしております。 (貴方が"帰った"あと) ……もうっ! いつもご飯も仕事もあげてるのに、"お客様"に狼藉を働くなんて! 無事にお帰りになられたからいいけれど……! 罰としてハードな仕事でも任せましょうか……! ……今度会うときは、あんな怯えた顔でなくて……飛びきりの笑顔が見たいですね。 何年後になるんでしょう……ああ、楽しみ! [前][目次][次][小説TOP][TOP] [しおりを挟む][感想フォーム][いいね!] |