学校/仕事から帰ってきた

■アケミちゃん
「あ、おかえりなさい。……わ、すごい顔〜」
 扉を開けた途端、くつろいでいたアケミちゃんと目が合った。きょとんとしていたがふんわりと破顔し、間を置かずに感心したような表情に変わる。アケミちゃんはなにをしていたのと聞くと、「大学から帰ってきたの。気まぐれで人間に混じるの楽しいよ」とのこと。
 貴方の顔をじーっと見つめたあと、ふんふんと鼻歌を歌いながらキッチンへ消えていった彼女。数十秒後帰ってきたその手には、色とりどりの菓子が入れられた小皿があった。
「人間って、疲れたら甘いものを食べるんだよね? 一緒に食べようよ」

■ヒギョウさま
「ぴぇ! ナマエ、梅干しみたいな顔してるのよ!?」
 疲れてるからそんな顔にもなるよね……。
 心配しているのか、しかし深刻な様子でもない焦り顔をこちらに向けるヒギョウさま。わんちゃんみたいでかわいい……。疲労もあり頭がぼうっとしていた貴方は、本能のまま彼の頬に手を伸ばし、粘土をこねるように動かしはじめた。「むぇっ」と悲鳴をあげるヒギョウさまに構わず、思うがままに頬を操る。柔らか〜い!
 もちもちした感触を堪能した次に羽を掴んだ貴方。同じく満足するまでなでようとして、先に手を掴まれた。……ちょっとむすっとしてる。
「びっくりしたのよ、さわるっていってほしいのよ。……うん、たくさんさわってどーぞ、なのよ!」

■おおいさん
「おいしい?」
 へとへとの体をソファに沈ませた貴方。そんな貴方を呼ぶ声に振り向くと、口になにかが押しこまれた。濃厚な甘さを転がし、チョコの味だと気づいた貴方を見ておおいさんは満足気な様子。彼がチョコを忍ばせたらしい。
 ありがとうとお礼をいうと、「うん。おつかれ〜」と労ってくれた。とてもおいしかった、お礼に今度、彼の好きな料理でも作ってあげたいな。そう思った貴方が質問すると、返ってきたのは貴方の名前ひとつだけ。
「……ねえ、もっとほしい?」

■旅館の求人
「ナマエ、こっちきてよ」
 羞恥心からか、僅かに顔をそらしつつ貴方を手招く彼。そんな彼に近寄ると、「ここに座って」とソファに座ることを促される。いうとおりにしてすぐに貴方の肩にかかる圧力。優しくもしっかりとした力加減にうっとりする貴方を見、「そんなにいい?」と後ろから声をかける彼はどことなく嬉しそうだった。
 肩もみありがとう。ずいぶん上手だけど、誰かに教えてもらったの?
「同じお客さんの相手してたから。ちょっと得意なんだ」

■邪視
「ずいぶんお疲れの様子で……ちょっと待っててください。――はい、どうぞ。水出しハーブティーです」
 帰ってきた貴方の顔を見、目を見開いたあとにそそくさと冷蔵庫へ向かった彼。テーブルに並べられた二人分のハーブティーと菓子に貴方は手を合わせた。「一緒に休憩しましょう」と微笑む彼にうなずき、ハーブティーを頂戴する。……おいしい!
 菓子を口にしたあと、ハンカチで口元を拭う彼にキラキラとした視線を向ける貴方。お菓子もおいしいけど、ハーブティーがとってもおいしい!
「ふふ、そうですよね? 原産地が長野なんです。僕の出身地で……。だからそういっていただけて嬉しいです」

■怪人赤マント
「ナマエ、そんなところで寝ては――起きそうにないな。どうしたものか……」
 疲労困憊だった貴方は、適当なクッションにもたれそのまま寝息を立ててしまった。彼に肩を揺すられても、何度声をかけられても意識は浮上しないまま。クッションに沈む貴方の頭をなで、困った顔を天井へ向ける彼。少し考えこんだあと、身につけている赤マントを外し貴方にかけた。
(寝具の用意をするまでこれで我慢してくれ。おやすみ、ナマエ)

■NNN臨時放送
「おかえりなさい、ナマエさ――ちょっと、そこで寝ないでくださいよ!」
 「ちゃんとベッドで寝てください!」と倒れかかった貴方を支える彼。「もう少しですからがんばって」と何度も励まされながら自室に辿り着いた貴方は、ふらふらとした足取りでベッドに沈んだ。起きたらありがとうっていわないと――そんな思考は瞬く間に溶けていき、気づけばすっかり夢の中。貴方の下敷きになった毛布の代わりを調達し、すっぽり体を隠した貴方の頭をぽんぽんと叩く彼。
「おやすみなさい」

■リゾートバイト
「なんか作るよ。すぐ作るから待ってて」
 そういってキッチンへ駆けこんだ彼。足早に戻ってきた彼の手には、小振りなおにぎりが三つほど。「ちょっと作りすぎたかも」と申し訳なさそうに表情を崩した彼に作ってくれただけで充分だとお礼をいい、おにぎりをいただくことにした貴方。一緒に食べようよと誘うと、「いいの? ……ありがと」とわずかに顔を綻ばせ、貴方の隣に座る。
 しばらくして、彼の動きが止まっていることに気づいた。大丈夫か問うと、なぜか貴方のことを心配される。
「や、その……腹痛とかなんねーかなって。爪とか入ってないか不安で……あ、入れてない! 入れてないんだけど……!」

■光の誓い
「まずは手洗いとうがいをしましょう。お洋服も脱ぎ脱ぎしちゃいましょうね。はい、ばんざーい! ……ちゃーんと着替えられてえらいえらい」
 玄関で待っていたらしい彼に至れり尽くせりの様子を見せられた貴方。あっという間に部屋着になった貴方を自室まで連れていき、毛布を広げる彼。「お昼寝には遅い時間ですが……。晩ご飯の時間になったら起こしますからね」とのこと。断るのも申し訳なく眠気に負けそうだった貴方は、彼のいうままに寝具の中へ。すぐに眠りについた貴方ににっこりと微笑む彼。
「かわいい寝顔……」


[][目次][][小説TOP][TOP]
[しおりを挟む][感想フォーム][いいね!]
- ナノ -