140文字で書くお題ったー

140文字で書くお題ったー様より、"貴方はカイレイで『お願いだから嘘と言って』をお題にして140文字SSを書いてください"というお題をお借りしました。

「私、好きな人ができたんだ」

 肝がぞわりと冷えきった。
 ――今、なんて?
 おれの体とは反対に、頬に優しく熱をにじませるレイさん。

「だから――」

 応援してね、などといわれたのかもしれない。けれど記憶に留める余裕はなかった。たとえそれが愛しきひとの言葉でも。

(ねえ、レイさん。どうして)

 冷たい底から這い上がる感情が、気持ち悪くてしかたがなかったから。

140文字で書くお題ったー様より、"貴方はコマレイで『日常崩壊寸前』をお題にして140文字SSを書いてください"というお題をお借りしました。

 人の顔が林檎みたいに真っ赤になることって、本当にあるんだ――その感情の一文字も言語化できないまま幾ばくか過ぎた。
 次の一手はどうしようか考えようとしたところで、耳がチリチリしていることに気がついた。熟れた口元を隠すコマコさんを見ているうちに、私にまで移ってきたみたい。

「いわれ慣れてないんですか」

 "かわいいね"返しをしようとしただけなのに。

「当、然。……いつも伝えているもの」

 コマコさんの返事を聞いて脳内に浮かぶ過去の数々。――近づけられた顔は薄く笑みを浮かべていて。

「顔、同じになってる……かわいいね?」

 瞬時に主張する鼓動に首を振る。コマコさんのその言葉は、いつものこと、なんだよね?

140文字で書くお題ったー様より、"貴方はイガレイで『世界の終わりに』をお題にして140文字SSを書いてください"というお題をお借りしました。

「カイガさん、おかえりなさい」

 ドアが開く音に頭を上げ、子犬のような顔に挨拶をする。レイさん、と上擦った声を丁寧に丁寧に口にする彼は、今日もなにかと戦ってきたようだった。

「今日はカレーですよ。レイさん、辛口はお好きですか?」
「カイガさんが作るなら、辛くても全然ですよ!」
「……ふふっ。なら、間をとって中辛にしましょうか」

 作っていただいたカレーを食べさせてもらいながら、たわいもない雑談をする。私にできるただひとつの、愛おしいことだった。

「今日はどんなアバンナドールと戦ったんですか?」

 そういって、私はなんていったのだろうと耳を疑う。
 "アバンナドール"ってなんだっけ。そもそも、カイガさんが戦う必要なんてどこに――

「レイさん」

 頭の隅が痛みを訴えた直後、そっと目を覆われた。

「ワタシもアナタも、なにか誰かを傷つけるような日常を送っていませんよ。疲れてしまいましたか?」
「……そう……かも、しれないです……」

 でも、足が鎖に繋がれているのだから、疲れることもないはずで。

「レイさん」

 私だけの思考を取り除くような、甘い湿度を持った声。

「今日はもう眠りましょう。だいじょうぶ、アナタはワタシと一緒にいるだけで幸せでしょう?」

 ――だから、なにも気にしないでいいんです。
 赤ん坊をなだめるみたいに髪を梳かされていると、だんだんと瞼が重くなってくる。それと反比例して浮かび上がってくる言葉。
 わたしはだれかをたすけられなかったような、たすけるべきだったような。なまえは、そう、ハジ――

「おやすみなさい」

 ――ぱちん。

140文字で書くお題ったー様より、"貴方はロロレイで『一緒に帰ろう』をお題にして140文字SSを書いてください"というお題をお借りしました。

「アバンナドールも倒したし、帰ろっか!」

 にかっとした笑みも自然に組まれる手も俺限定。あまりに自然すぎる行為に呆れた顔を浮かべると、なにその顔、と不貞腐れられた。

「レイってほんと美少女だよな」
「なに急に。そんなこと――」
「それ以上いったら俺にまで被害が及ぶからNG」
「本当なに急にっ」

 きょうだいらしいラフな会話、その中で。

(もしまったくの他人として出会ってたら、恋してたかな)

 ――するだろうな。"俺"、美少女だし。
 うんうんとうなずく中自己肯定ではない思いに気づき、"それ"は絶対的な気の迷いだと蓋をした。


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