本編/シルバー

※授業内容捏造

 材料、使用道具、作業順序など複数の要素で構成されるのが錬金術だ。これら一つ変われば、全く異なるものが完成することは多々ある。特にこちらの世界の錬金術は、メルフィが扱うものより科学よりのものであり、その傾向は増していた。よって一度やらかしたらとんでもねえ失敗をやらかしかねないため、実験授業中のおふざけはご法度……ご法度なのだが、授業で一回は誰かしらが釜を爆発させていた。だってNRCだし。
 ともかく本日の1、2学年合同授業で作成するのは衝撃で簡易魔法を発動させる鉱石である。いわゆる爆発物ってやつだ。メルフィの錬金術でも似たようなものがあるが、強度調整を怠れば大怪我をする恐れがある。脆すぎれば保管用の小瓶に入れる前に手元で爆発しかねないからだ。だからといって固く作りすぎても地面に叩きつけても発動しなくなるのだが。
 もっとも1年の授業で作成するものなので、材料からして威力は高が知れている。それでも過去に連鎖爆発を引き起こした事例があるので、担当教師のクルーウェルが2年生はしっかり1年生を見張るよう言いつけた。
 が、実際は見張る側であるはずの先輩の方が危なっかしいペアもあるわけで。カリムとイグニハイド生のペアは後輩の方がフォローに終われている。長年の従者ですら手こずるゴーイングマイウェイ野郎を口下手な後輩が制御できると思えないが、席順で強制的に組まされた以上仕方あるまい。その隣ではセベクがいつものクソでかボイスでサバナクロー先輩の耳を殺しているが、本人はただ熱心に取り組んでるだけだ。
 一方メルフィはというと、勝手の違う錬金術の手順をしっかりと確認していた。どうやら今回は片方が鍋をかき混ぜつつ、もう1人が魔力を注ぎ込む必要があるらしい。ユウほどではないが魔力量が少ないメルフィは、必然と錬金窯を担当することになる。それ自体は構わないのだが、問題は相方の方だ。

「シルバー先輩、目は覚めてます?」
「ああ、大丈夫だ。……今のところは。」

 居眠り常習犯のシルバーがうっかり寝てしまわないか、それが一番の懸念材料だ。今回使用する材料は魔力を注ぐと凝固化しやすくなる性質を持ち、一度中断してしまうと必要量の魔力を注ぎ込めなくなってしまう。そのためうっかり作業中にうたた寝されてしまうのは困るのだ。

「何か眠気覚ましになりそうなものは持ってないんですか?」
「リリア様に飴やガムを頂いたが流石に授業中にはな……。」
「ああ、クルーウェル先生に怒られそうですね。」

 授業中にお菓子を食べるな駄犬と言われるだろうとメルフィは頷く。それもあるが強烈なにおいを発するので、人が多い場所では食べられないという理由もある。(この時点のメルフィはまだリリアの味覚音痴とドリアンキャンディーの恐ろしさを知らない。)

「だからといって薬に頼るのも不安がありますね。気付け薬も睡眠薬同様、依存性がありますから。」
「昨年クルーウェル先生に相談した時も同じことを言われたな。」

 眠気覚ましの作り方はメルフィも知識として知っているが、ほいほいと乱用しては薬の効果が切れたとき、ひどい倦怠感に襲われるようになってしまう。長期的に考えるとシルバーのような過眠症の場合、悪化を促してしまいそうだ。

「そうなると話しながら作業するしかなさそうですね。喋っていれば少しは眠気も抑えられるでしょうし。」
「そうしてくれたら助かる。」

 会話しながらだと集中力が乱れて魔力にムラがでてて完成度は下がるだろうが、途中で寝られるよりマシである。商品にするわけではないのだから多少の粗さは妥協の内である。

「もし返事をしなくなったら遠慮なく叩き起こしてくれ。」
「それって既に寝ているので、意味ないのでは?」

聞こえない子守歌


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