本編/ジェイド
しばしばメルフィがルークと共に狩りをしていると耳にしたジェイドは、彼女を山を愛する会に勧誘した。何とかして外出許可を得る機会を増やせないかと考えていたメルフィとしてはまさに渡りに船であり、まずは体験入部と至った。イソギンチャク騒動のことといい色々思う所はあるがそれはそれ、これはこれ。
「ジェイド先輩って本当にキノコが好きなんですね。」 「おや、メルフィさんはお嫌いでしたか。」 「そんなの今更でしょう。ただ純粋にそう思っただけで。」
最初は人魚なのに山を愛するなんて変わってると思ったメルフィだが、そんなの序の口だった。彼のキノコ好きはマニアの域である。 キノコ料理が好きなだけにあきたらず、今みたいにキノコ狩りに行くこともあれば、キノコの栽培もしているらしい。趣味のテラリウムはもちろんキノコ入り。口から出る知識は下手な書物より詳細で、メルフィは舌を巻いた。今後キノコ関係で何かあったときは、自分で調べるより彼に相談した方が早いだろう。対価が少々恐ろしくはあるが。 ちなみにフロイドはキノコ嫌いらしく、真逆の嗜好はそれはそれで双子らしい。
「僕としては1人で熊に突撃したメルフィさんに驚きましたが。」 「突撃したって……、先に襲ってきたのは熊の方ですよ。」
確立としては低いが、森では野生動物と遭遇することもある。今回はこちらを食べる気まんまんの熊と遭遇し、ジェイドもマジカルペンを構えた。しかしそれより早くメルフィが一発K.O.したわけだ。多くの動物は頭が弱点であり、そこに鉄球が直撃すれば大抵気絶する。 それだけならばジェイドも驚きはしなかった。メルフィの見た目に反した戦闘能力の高さは学園でも有名だ。問題はその後である。
「だからといって自分が食べられる側になるとは彼も思っていなかったでしょう。」 「熊はそのままだと獣臭くて食べれたものじゃないですから、一度錬金術で加工しますけどね。」
カバンからナイフを取り出したかと思いきや、テキパキと解体し始めたのである。血液すらも綺麗に瓶詰めする手際の良さは無駄がなく、鮮やかとしかいいようがない。ルークが彼女を狩りに誘うだけはある。
「メルフィさんはユウさんと違ってかなり原始的な方ですよね。」 「笑顔なのにストレートな言葉で貶すの止めてくれません?」
ちなみにユウはメルフィが鶏を捌くのを初めてみたとき、強い眩暈に襲われたという。現代っ子のグロ耐性は低いのだ。
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