本編/レオナ

 メルフィの扱う錬金術は大量生産に不向きであるが、出来上がるものはこの世界のものより遥かに多様性に富んでいた。彼女の母国が魔術より錬金術の方が重要視されているだけはある。もっとも材料がなければ知識も持ち腐れであるし、見習いに過ぎない彼女の作れるもののなどたかが知れている。

「お前の錬金術、考えようによっては俺のユニーク魔法と似ているよなぁ?」
「……。」

 高慢さと嫌味を含んだ笑みを向けるレオナにメルフィは苦虫を噛んだような顔をした。
 王者の咆哮、それが彼のユニーク魔法だ。全てを砂に還す能力は強力な魔法であると同時に、干ばつを嫌う彼の故郷では忌避されるものだ。
 そんな魔法と彼女の錬金術、似ているよりむしろ対局的ともいえるのではないか。だって錬金術は創造する力なのだから。

 ではその創造の過程には何をする?

 万物をマナと呼ばれる元素に分解し、再構築する技術。彼女の錬金術の真に恐ろしきは創造性ではなく、無差別な破壊能力にある。普段手をかざすことで対象を分解構築させているが、安全性を考慮しなければそれすらも必要ない。オーバーブロッド相当の暴走をさせれば彼女の周囲にあるものはあっという間に形無きものとなり果てるだろう。そう、魂ですら。
 だがそれほどの破壊力を発揮すればただですむはずもなく、本人まで跡形もなく分解されてしまうのが落ちだ。そもそも人間は無意識に力を制御をしているので、そんな火事場の馬鹿力を意図時におこすのは至難の業である。

「レオナ先輩のと違って時間はかかりますけどね。」

 破壊と創造、どちらの側面も錬金術だ。それなのに彼の魔法と似ていると評されるのはメルフィとしては不服である。しかしそれを口にすれば今度は彼の魔法を貶すことでもあり、直接的な否定はしなかった。
 そんな彼女の心中を察したレオナは鼻で笑う。

「他者の力を自分のものにするって意味ではむしろアズールの方が近いかもな。」

 メルフィは授業で魔石を魔力の代用に使用しているが、それだって誰でもできるわけではない。固体化したマナを再度分解し、エネルギーに変換する必要があるからだ。例えこの世界の魔法士が魔法石の代用として扱ったとしても、彼女のように完全に使いこなすことはほぼ不可能だ。彼女が魔法石やこの世界の魔法を完璧に使いこなせるわけではないのと同じように。

「で、お前はその力をもって何をする?」
「……そんなの、決まっているじゃないですか。」

 元の世界に帰る。それが彼女の夢であり、目指すべきものである。

ラーダとペテロ


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