外伝/SS 01
(Episode 01/Episode 02/Episode 03)
▼Episode 01 まだ見習いとはいえ錬金術士であるメルフィは当然その手の知識が豊富で、その成績は優秀なものかと思われた。しかし実際蓋を開いてみれば実技はさておき、ペーパーテストの点数はさほど伸びていなかった。
「へえ、それは残念だったな。」 「なまじ知識があるばかりにややこしいといいますか……。」
なんでもない日のパーティーの準備中、小テストの結果を聞いたトレイは意外そうにこぼした。 そもそも知識があるといってもメルフィの錬金術はこの世界のものと原理が異なり、専門用語も異なるものが多い。その癖共通点も多いから、まるで常にひっかけ問題を出されているかのようだ。いっそまっさらな状態で学んだ方が有利なぐらいである。
「おかげさまでクルーウェル先輩に特別課題を出されてしまいますし。」 「そんなに悪かったのか?」 「いえ、どちらかというと先生の個人的好奇心だと思います。」
なんせ課題の内容がメルフィの世界の錬金術のレポートだ。まあ出来が良ければ材料の手配など融通をきかせてくれるようなので、メルフィにとっても悪い話ではないのだが。
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▼Episode 02 ※錬金術の材料がエグイし、未遂とはいえモブがひどい目にあうぞ!
さまざまな要因が重なってオンボロ寮組は良くも悪くも有名人だ。そのせいでくだらないやっかみや体目的などで絡まれることも少ない。その度に淡々と物理で叩きのめしていたメルフィだが、回数を重ねればいい加減うんざりするというもの。ここは一度趣向を変えるしかなかろう。
「私も元の世界に帰るためずっと研究してるんだけど、なかなかその足掛かりになる道具が作れなくって。」
いつも通り叩きのめした不良生徒をロープで縛りつけたメルフィは困ったような口ぶりをしながら、満面の笑みを浮かべていた。その不穏さに生徒達は逃げようとするものの、錬金術で作られた意志を持つロープは抵抗されればされるほどきつく縛り上げる。魔法で対抗しようにもマジカルペンはちゃっかり取り上げられていた。彼女からしてみれば魔法石に頼らざるを得ない魔法士は魔術師に比べたら遥かに対処しやすい。
「世界樹の種が必要なんだけど、天然物となると貴重品過ぎて貧乏学生に手が届くものでもないでしょ?だから錬金術で作った人工物で代用しようかなって思ったんだけど、それでさえ材料が材料だけに難しいんだよね……。」
やれやれと肩をすくめたあと、メルフィはウエストポーチからナイフを取り出す。普段彼女が仕留めた魔物の解体処理に使っているものだ。
「だからさ、協力してくれない?どうせ二つあるんだし 、精巣の一つぐらい失ったって問題ないでしょ。」 大嫌いな私がいなくなるのは君達も望むことだろとメルフィが獲物に手を伸ばした時、不良達は死を覚悟をした。 なお上記の材料は人間のものである必要はないことをここに記しておく。
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▼Episode 03 ※IFでホラー耐性が低いツイステッドワンダーランド 突然壁からすり抜け飛び出してきたら普通に驚くが、この世界のゴーストは愛らしいというのがユウとメルフィの正直な感想だった。白くて丸くてふわふわしてるなんてマシュマロかな?
「まさかあそこまで阿鼻叫喚になるとはおもわなんだ。」 「この世界のホラー耐性の低さよ。」
だからといってなんとなしに語ったユウの怪談話に、周囲にいた生徒のほとんどがあそこまで怯えるとは思いもしなかった。古代魔術の授業などで呪術を学んでいるこっちの世界の方が物騒だろうに。(だからこそリアリティが増し、煽られる恐怖心というものもあるのだが) 人を怖がらせることを目的とした話である以上メルフィも感じるものはあったが、彼女の故郷でもその手の話がないわけではないし、アンデットやゴースト系の魔物も立派な狩り対象だ。むしろ途中からそちらの方が気になっていたので、恐怖心なんてそっちのけになったというのが本音である。錬金術士って本当に逞しい。
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