本編/監督生

※あっさりだけど腐ネタ連発

 グリムをはじめ、ほぼ初日から退学危機にあったエースやデュースの傍にいると霞んでしまうが、オンボロ寮監督生も闇の鏡に選ばれただけあってただの優等生では収まらない一面をもっていた。

「エースとデュース、どっちが受けだと思う?」
「ユウ、貴方疲れてるのよ。」

 座った目で問うユウにメルフィはちょっと引き気味になる。しかしそれぐらいで屈するユウではなかった。だてに猛獣使いと呼ばれてないのだ。批判のうちにも入らない冷めた目にひるむほど柔い精神じゃない。

「いいじゃん、いいじゃん!せっかくの男子校だよ!?薄い本的な展開期待しちゃうじゃん!」
「たぶん、彼らはノーマルだと思うけど……。」
「メルフィは夢がない!」

 ドンとユウはオンボロ寮にふさわしい古びたテーブルを力強く拳で叩く。
 さて、既に多くの人はこのやりとりでお察しのことだろうが、ユウはいわゆるオタクというやつでありボーイズがラブな話もしっかりと嗜んでいた。それこそ元の世界では某イラストサイトでその類の漫画を眺めてはにやついていたものである。
 しかし勘違いしないでほしい。元の世界の彼女は節度あるオタクであり、同士相手でなければ大っぴらに語るようなことはしなかった。しかしこの世界に来てからトラブル、トラブル、トラブルのバーゲンセール。困難を超えるうちに(癖が強すぎるが)頼れる仲間は増えていったけど、趣味を語り合う仲間は増えない。男子相手に腐女子カミングアウトするなんてハードルが高すぎるのだ。せっかく築き上げた信頼を一瞬でパーにするなんて恐ろしいこと出来るはずもなかろう。
 そもそもこの世界は同人活動というものが日本に比べあまり活発ではなかった。こちらのSNSを漁っても現代日本ほど数がない。(むしろ日本の変態国家ぶりが頭おかしいのだが。)溜まったストレスを趣味で発散しようにも供給が少なすぎるのである。
 ようするに萌えが足りなさすぎでユウの頭はパーンとなった。その矛先は学園唯一の同性の友人であるメルフィに向かい、彼女はお茶片手にその話に付き合うことになったのである。ちなみにグリムとゴースト達は空気を読んで退散した。
 幸いメルフィの故郷は同性愛に比較的理解あった。錬金術で作られた霊薬のなかには性転換できるものがあり、錬金術士の中には性別なぞ飾りだと宣うものもいるからだ。なおメルフィ本人はノンケであり、初恋の人がホモだったときは普通にショックを受けた。性自認が女性の彼女はどうあがいても失恋確定である。
 ともかくメルフィは戸惑いはすれど、ユウの趣味そのものには嫌悪感は抱かなかった。こういうカップリングが好きだとか、こんなシチュエーションに胸が高鳴るとか、いきいきと語る彼女は恋に恋する乙女と大差ない。ただその妄想を身近な人間に対してもしているとは思いもしなかったが。

「それに周囲は皆ホモって思ったほうが精神衛生的にいいっていうか。」

 机にうつ伏せながらこぼしたユウの言葉はいろんな感情がないまぜになっていた。
 不良のさぼるこの学園に通うことになってから体目当てに近寄る男はいるが、親しい友人はこれといって特別女扱いするわけでもない。むしろ女だろうがなんだろうが無理難題を押し付けられる始末。お姫様扱いしてくれとはいわないから人並みの優しさを頂戴な。

「あと、自分の知らないところで自分達がホモネタにされるなんて最高の嫌がらせだと思うんだよね。なんなら本も書いちゃう。」
「ぶっちゃけそれが本音でしょ。」

 後日、更にストレスどっかんしたユウは誰に対してもオープンオタクになることになる。

性癖爆発


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