天文世界 外伝05

※U時代でシーナと坊ちゃんの話。

 3年かけてようやくグレッグミンスターに戻って来たティル達だが、リオウに頼まれて新都市同盟軍の本拠地にも、しばしば顔をのぞかせていた。同盟軍にはティル以外にも元解放軍メンバーが協力しており、彼らと再会できるのも悪くなかった。ともに来たロゼッタは解放軍いたころから変わらぬ好奇心で、あちこちを見て回っては気まぐれにお手伝いをしているようだ。招いた本人であるリオウも、彼女の神出鬼没具合に驚いていたのは記憶に新しい。

「で、ロゼッタとはどこまでいったんだ?若い男女の2人旅、何も起こらないわけないよな。」

 そんななか、ティルは酒場でニヤニヤと笑うシーナに捕まっていた。

「相変わらず不躾だね、シーナは。」
「3年ぶりにトランの英雄様が聖女様と一緒に帰ってきたんだ。誰だって気になるってもんさ。」
「英雄だとか聖女だとか、周囲が勝手に持ち上げてるだけだろ。」

 もともとリーダーとして担ぎ上げれていた自分ならまだしも、まさか彼女まで尾ひれはびれついていようとは。彼女の扱う魔術はさておいて、普段の振る舞いは聖女とは程遠いとティルはため息をつく。実際ロゼッタに会ったことのある人間なら、ティルのそれに頷くだろう。もっともロゼッタが聖女と呼ばれるようになったのは、ティルとともに旅だったことも原因だろうが。ただの少年少女ではなく、英雄と聖女が旅立ったと表現する方が花がある。群衆はドラマを求めることを、ティルもよく知っていた。

「ま、英雄もところ変わればただの人っていうしな。ロゼッタも聖女と呼ばれているわりに、誘えば簡単にお茶してくれるし。」
「人の彼女に何やってんだ。」
「安心しろって、それ以上のことはしてねえから。意外と境界線がしっかりしてるんだよな、ロゼッタって。」

 むしろどうやって彼女をおとしたのか、ティルに聞きたいぐらいだとシーナはこぼす。最初は手ごたえありかと思うのだが、どこか手慣れた様子で受け流されてしまうのだ。シーナと食事をするのだって、解放軍時代からの戦友であるよしみにすぎず、それ以上の意味はないだろう。パーソナルスペースは保ち続けるあたり、存外ガードが固いことはうかがえる。それでも少々迂闊なところがあるのは否めないが。

「そもそもあの子が照れることってあるのか?」
「滅多にないだろうね。照れたとしてもなかなか顔に出さないから。」
「へえ、例えば?」
「それをシーナに教える義理はないさ。」

 これ以上話すつもりはないと、シーナの隣に座っていたティルは立ち上がる。

「ロゼッタとしっかり話しておかないといけないことが出来たから、失礼するよ。」
「……はいはい、呼びとめて悪かったな。」

 にっこりと張り付けたような笑みを浮かべるティルを、シーナもこれ以上引き留めようとはしなかった。
 相変わらず過保護なんだか嫉妬深いのだかよく分からないリーダー様だ。これから雷がおちるだろう少女にシーナは心の中でそっと合掌するのだった。

明瞭関係


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