Patriot 00

 それはまだ彼ら彼女らが幼いころの話。トロデーン城近くの森で幼い少年が見つかった。捨て子であろうその子は記憶もほとんどなく、頼る大人もいない。そんな子供を気の毒に思った王がその身を引き受けようとしたが、幼子とはいえ正体知れぬ人物を城に引き入れるのかと反対の声もあがった。

「ならば私が彼の後見人となりましょう。」

 そこで手を挙げたのが近衛隊長だった。腕の立つ彼ならば子供が間者だとしても対処できるだろう。それに平民出身の彼は血筋などあってないようなものだ。

「それに私にも彼と年の近い娘がいる。姉弟として育てればよい刺激となるはずです。」

 そう話す隊長にそれならばと大臣達も引き下がった。




 母を亡くした。それはハイネがまだ8才のときである。もともと病気がちであったことは子供ながら彼女も知っていたけれど、母を失うにはまだ早くその傷は深かった。いつも遊んでいる姫ともしばらく会う気にはなれないぐらいには。
 母の葬儀から1年たち、ようやくハイネが持ち直し、今度は姫が母を失ったころのことだった。1人城を抜け出した姫が森で記憶喪失の少年を見つけたという知らせが入った。

「ハイネ、彼は今日から我が家の一員となるエイトだ。仲良くできるかい?」

 父の後ろに隠れた少年は少女より背も低く、慣れぬ場所や人に不安げな顔をしている。それでいて真っすぐとこちらを見る少年の瞳にハイネはどこか吸い込まれるような錯覚すら覚えた。

「私はハイネ。今日からエイトのお姉ちゃんになるわ。」

 差し出した手を掴んでくれた小さな手は暖かい。
 幼い少女に母は救えなかった。それでもこの新しい家族はせめて守ってみせようとハイネは誓ったのである。

セピアの思い出
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