Patriot 42

 ラプソーンは残りの七賢者の末裔を狙ってる。それが分かっていてもエイト達が誰が継承者なのか分からない。故に先回りすることもできずに、レオパルドの後を追うことしかできない。この先は雪降り積もる北の大地だ。

「へっぶし。」

 北と南を隔てる山脈の洞窟にヤンガスのくしゃみが響く。外から冷気が吹き込んでいるのも無理もない。
 ハイネやククールはもともと着込んでいるためまだ平気だが、肌の露出が多いヤンガスやゼシカはもう我慢できないと馬車からコートを取り出す。洞窟ですでにこれでは先が思いやられる。

「こんな吹雪のなか無理に進んでも遭難するだけだ。ここは一旦休んだ方がよさげだな。」

 ククールの言う通り、外からは風が吹き荒れる音が聞こえてくる。焚火をするための枝もないが、一行は吹雪が落ち着くのを待つことにした。





 雪山の恐怖は吹雪だけではない。雪が止み再出発した早々、エイト達は雪崩に飲み込まれてしまったのだ。
 次にエイトが目が覚めたのは黒い木造の家のベッドの上だった。

「よかった、目が覚めたのね。」
「……姉さん、ここは?」

 ベッドの横で胸をなでおろすハイネにエイトは尋ねる。見知らぬ家に、不在の仲間たち。マグカップを持ったハイネの様子からして、ここが安全な場所であるのは確かなようだが。

「私達が雪崩にあったことは覚えてる?ここはそこからほど近い場所にある山小屋よ。」

 奇跡的に雪崩に巻き込まれずに済んだトロデ王がここに住むお婆さんと大きな犬に助けを求め、今に至るのだ。彼女たちがいなければ今頃エイト達は死んでいただろう。

「皆は上の階にいるから、貴方もその寝ぐせを直したら上がってくるといいわ。」
「っ!?」

 くすくすと笑いながら指摘するハイネに、エイトは慌てて傍にあったバンダナを頭に結ぶ。姉弟なんだから寝ぐせぐらい今更だが、からかわれるとやっぱり恥ずかしいものがある。

北の国へ
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