無名草子02

「あんたが主の言ってた新入り?」
「ああ、ユウトだ。」

 この本丸の初期刀は加州清光であり、ユウトの案内役は彼となった。いつもなら新人教育は縁のある刀剣男士に頼むのだが、彼の場合元主関係で縁のあるものはいない。粟田口は自分が気まずいからとユウトが遠慮した。

「わかってると思うけど俺たちは今同じ主に仕える仲間だ。私闘は原則禁止されてるからね。」
「ああ、戦場で私情は挟まないさ。」
「俺は本丸内での話もしてるの。」

 なるほど、確かに外見こそ粟田口の奴らに通じるものがあるがその中身は違うと清光は感じた。臆病な五虎退でさえまっすぐ目をみて話すのに、ユウトはあまり視線を合わせようとしない。まったく合わないわけではないが、その頻度は少ないものだ。
 清光からしてみれば縁のある刀に虎徹の贋作がいるが刀剣男士としてはそのこと自体は大した問題ではないと思う。虎徹の打刀としてはいろいろ複雑なようだが、脇差のほうは必死に仲をとりもとうとしている。

「戦場での連携は日々の積み重ねも大事だからね。そこんとこ理解しておいてよ。」





 対し粟田口は別室にもう一度集まり、紫雲について話し合っていた。

「俺、絶対に新しい兄弟だと思っていたよ。」
「俺たちは兄弟が多いからな。」

 いいわけがましいがそれが脇差二人の率直な感想だった。

「仕方ありませんよ。贋作だといわれても疑ってしまうほどですし。」

 前田の言う通り、ユウトの刀身は自分たちのものと通じる点が多くあり、贋作であることを疑うぐらいの出来栄えだ。吉光の作でなくともその後継者がつくったのではないかと思うほどだ。

「蜂須賀が虎鉄の贋作が多くて真作まで疑われたっていってただろ。あいつもそれなんじゃないか?」
「そうだとしても自分から贋作っていうかなあ、普通。」

 厚の意見に信濃は首をかしげる。自分のことは自分が一番わかっているはずだ。

「まあ嘘だとわかっていても何度も言われればそれが真実だと思っちまう場合もあるがな。」
「何それ、怖っ!?」

 それに対し薬研がマインドコントロールの可能性をしめせば、乱はぞっとした様子で声をあげた。

「鳴狐は元は写しとしてつくられたものを商人が勝手に贋作として売ったのではないかと言っております。」
「ああ、それなら彼の言っていることや完成度に合致しますね。」

 鳴狐の意見に一期は納得する。
 結局粟田口のあいだででた結論は「吉光の後継者が作った刀を商人が吉光の贋作として売った」というものだった。

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