無明草子06

 食事を終えひと段落した後、ユウトは審神者と万屋へ買い出しにでかけることとなった。
 万屋商店街、略して万屋は政府管轄のショッピングモールだ。基本的に政府関係者か許可証をもった商人しか出入りできないここは審神者だけでなく刀剣男士向けの店も立ち並んでいる。本丸の運営に最低限必要なものは支給されるものの、それだけでは足りないものはここで買うことが多い。人が集まることもあってなかには買い物ではなく、ほかの本丸や刀剣男士との交流目的で出かける者もいる。
 ただ戦の要である審神者が集まるため敵対勢力に狙われるリスクも抱えている。一部では戦闘系審神者がいるとはいえ、多くの審神者本人は非力だ。もちろん政府も万屋の警備を強化しているが、審神者も近侍を連れていくことを義務付けられている。
 ユウトも顕現したてとはいえ近侍になれるが、彼はまだ公表されていない存在だ。そこで万屋の買い出しは燭台切がカモフラージュとしてついていくことになった。近侍を連れていくことは義務付けられているが、連れていく刀剣男士の人数に規制はない。ユウトは研修に来た審神者の親族ということにした。

「ざっとこんなところだね。ひとまず着替えはこれだけあれば十分だろう。」
「さすが燭台切、きちんと予算内ね。」
「結局燭台切にほとんど選んでもらったようなものだな。」

 燭台切とユウトの手には先ほど買ったばかりの服が入った袋がある。仕立てを待たずに購入できるようになって、昔にくらべ現代は随分と便利になったものだとユウトは思う。審神者はというとその隣で財布の中にある残高を確認している。

「新入り君の服を選ぶ機会なんてあまりないからね。つい張り切ってしまったよ。もしかして好みに合わなかったかい?」
「いや、燭台切の選ぶ服は派手すぎず地味すぎず丁度いい。」

 買った後で趣味でないといえるはずもないが、燭台切がユウトに選んだものは彼にとって来やすそうなものばかりだ。

「次は日用雑貨ね。買い終わったらすぐに使うもの以外郵送すればいいから。」

 残りの予算の確認が終わった審神者にさあいこうと燭台切がいいかけた一瞬のことだった。

「うぐぁ!?」

 審神者の財布をひったくった男が紫雲の足払いで勢いよくこけたのだ。

「政府管轄地だってのにひったくりがいるなんてな。こいつ、どうする?」

 ひったくりの手から零れ落ちた財布は燭台切が拾い上げ、ユウトはひったくり犯を抑えながら審神者に尋ねる。見た目こそ幼い短刀ではあるが、刀剣男士だ。力は成人男性より少し弱いぐらいで、コツさえわかっていれば素人の動きを封じるなどたやすいことである。

「そうね・・・・・、これが初犯とも限らないから役人に引き渡しましょう。どこの誰だかは知らないけど。」

 突然のことに頭がすぐについていかなかった審神者も、ユウトに尋ねられてはっとした様子でこたえた。何事かと増えてきたギャラリーにユウトは煩わしそうな表情をした。



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -