水面鏡花/タケミカヅチ・ヤタガラス

 黒船によって現れた悪霊により滅亡の危機に襲われる八百万界。だが八百万界に突如現れたのは悪霊だけではなかった。

「レイナ殿は悪霊とはまた違うところからこの八百万界に紛れ込んできたと?」
「まあ、端的に言えばそうなるかな。」

 異世界から訪れたという少女と女性の狭間ぐらいの齢の彼女はタケミカヅチの言葉に頷いた。

「この世界に紛れ込んで一か月ぐらいたつわけだけど、元の世界に帰るにも定住するにも宛てがなくってさー。悪霊は常に侵略侵略ってほかに娯楽はないのかってつまらないし。」
「つまらないって貴方……。」
「だって私に加虐趣味とかないもん。それに噂によると君たちって悪霊をぶっとばそうとしてるんでしょ?」

ヤタガラスのカア君はレイナの言い草に呆れた目をむける。もともと八百万界の人間ではないレイナからしてみれば誰がその土地を制圧ようが大した話ではない。ただよそ者の自分にとっても過ごしやすい環境であればいいのだし、それが八百万側だと判断しただけだ。

「というわけで傭兵としてでもいいから私を仲間にいれてくれない?三食昼寝おやつつきならなおよし。」
「図々しいうえに怪しさ満点の貴方を信じろと!?」

にかっと笑ってお願いをするレイナにカア君がバタバタと羽をはためかせながら怒る。

「まってくれ、カラス殿。困っている者をそう簡単に突き放すのはよくないぞ。」
「私は貴方のそう簡単に人を信じるところが不安になります。……はい、主様なんですか?はい、はい。」

 それをタケミカヅチがなだめていると、どうやら独神がカア君に呼び掛けたようでカア君はそれに対応する。その様子をレイナが怪訝な顔でみるのでタケミカヅチは彼女にカア君は自分たちの主と離れたところでも会話ができるのだと説明する。

「はあ、わかりました。主様が一度あってみたいとのことです。ついてくるのは構いませんが、主様に危害を加えることは絶対に許しませんからね!」
「もう、本当信用ないなー。ま、一度会えるならこっちのもんよ。」

ピイピイとわめくカア君にレイナはどこか余裕そうに笑ってみせた。


浮遊庭園

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