無明草子01
戦場や鍛刀で手に入れられる刀は入手率に差はあれ、だいたい決まっている。だがごくまれに政府から発表されていない刀剣が発見されることがあった。
「兄弟、これは……。」 「見おぼえないけど俺たちの兄弟かな?」
骨喰が見つけたのはそんな一振であった。
「お前ら!新しい兄弟がふえるぞー!」
鯰尾の掛け声に本丸の一室に集まった粟田口は騒ぎ出す。新発見された刀剣は政府に許可をもらったあと、刀剣男士として顕現することになったのである。
「それでは主、お願いします!」 「わかったわかった。」
主と呼ばれた女性は吉光の銘が刻まれた短刀に祝詞をつげる。それにこたえるように短刀は光と桜吹雪を放つ。
「俺はユウト。俺の刀匠は粟田口吉光に憧れていたが、この銘は商人が勝手に後付けしたものだからな。」
新たに呼び出された刀剣男士の言葉に本丸の時間は一瞬停止した。
その場が凍り付いたのを察した審神者はその場を解散させ、ユウトと二人で話すことにした。
「銘が後付けってどういうこと?それも商人がって……。」 「どういうことも何も、贋作ってことだよ。主君も刀に携わる人間なら知ってるんじゃないか?粟田口は贋作が多いって。」
ユウトによると彼の刀匠は無名の職人で粟田口吉光に強くあこがれていた。そのため彼の作風は粟田口の影響を色濃くうけており、完成度も高かったためぱっと見では見分けがつかないほどの代物だ。 それに目を付けた商人は刀匠から仕入れた刀に偽装の銘をいれ、吉光の刀をして高値で売り出した。しばらくしてそれに気が付いた刀匠は商人を役人につきだし、二度と刀を作らなかったという。
「そういうわけでだから粟田口の奴らと顔を合わすと気まずいんだ。そのあたりは理解してくれ、主君。」
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