放課後の生徒会室は僕たち二人だけの空間で僕は密かにこの時間が楽しみだった。

僕の隣に座る彼女は容姿も成績も優秀で人望も厚く、早くも来年のローズクイーンと噂されているほど完璧な存在だ。

そんな彼女が生徒会執行部に立候補した時は正直驚いた。元々気配りのきく彼女だが仕事を任せれば期待以上にテキパキと働いてくれる。今では頼りになる優秀な人材で今日も来週の会議に使用する書類作成を手伝ってもらっている。
ほかにも手の空いている生徒会役員はいるが、僕は君だけをこの生徒会室へ呼び出した。

それは君が特別だから。


君は綺麗で純粋で完璧な存在。そして時には……。



「紺野先輩?」

先程までたわいもない話していたが突然黙り込んだ僕に心配そうに声を掛ける。
ほら、またそうやって上目遣いで僕を見る。君のひとつひとつの行動に僕がどれだけ翻弄されいることか。

つい先日もデートの帰り道にスキンシップという名目でベタベタと僕に触れてきた。きっとこれは彼女なりの愛情表現なんだろう。好意のある子からなら嫌でもないしべつに否定はしない。

ただ、僕だって男だ。

君に触れられた場所は身体中の熱が集中して、心拍数も異常なまでに上昇する。まるで発熱を出した時に似ていて、胸をぎゅうっと誰かに掴まれている様な感覚に陥る。

君にもっと触れていたい。
君にもっと近づきたい。

そう思わずにいられない。

「ねぇ、よかったら明日僕の家に来ないか?」
「明日…ですか?」

僕の誘いに少し戸惑っている様子を見せる。
まさか僕の内に秘めた感情に気付いてしまったのだろうか。
自宅なら誰にも見られることがなく君に触れて、近づいて…。君を独り占め出来るという僕の醜い独占欲に。

「いや、その、君にオススメのDVDがあってね。それで…」
「…ごめんなさい!明日は設楽先輩と植物園に行く約束していて…」

不安にさせないように焦って理由をこじつけたが彼女の口からは意外な答えが返ってきた。

設楽、と…そうか。
僕よりも設楽と先に約束をしていたのか。

ああ、僕はなんて自意識過剰なんだ。彼女は僕の気持ちなんてちっとも気付いてなんかいない。僕のことではなく設楽のことを考えていたのか。

今まで持て余していた全身の熱がサァーと引いていき、変わりに今まで抑えていた黒い感情がふつふつと沸き上がってくる。

独占欲?嫉妬?

この感情は何なのか。

そんなことをぼんやりと考えちらりと彼女を見ると今にでも泣き出しそうな顔をしている。きっと彼女の泣き顔はさぞかし綺麗なんだろう。笑顔を絶やさない彼女が僕に泣かされる姿を想像するだけで背筋がゾクリとした。このまま欲望に身を任せ力ずくで僕のものにしてしまうのもいいのかもしれない。

でも、そんなことをしたら今まで僕が積み上げてきた信頼や彼女と過ごすこの時間も全て失ってしまう。
そんなことはあってはならない。

「そう…それなら仕方ないな」
「せっかく誘ってくれたのにごめんなさい…」
「気にしないで。…また日を改めて誘わせてもらうよ」

頭を軽くぽんぽんと撫でると君は安心したのだろう、僕の偽りの笑顔に気づかずに可愛らしく微笑みを返してくれた。

彼女は僕以外の男にもスキンシップやこの笑顔を向けているのだろうか。明日会う設楽にも…。

そんな君が愛しくてまた憎いとさえも感じた。


君は綺麗で純粋で完璧な存在。

そして時には残酷な存在だから。

君を汚して壊したくなる僕はどうかしてしまったのだろうか。







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サブタイトル
「紺野玉緒、Sへの目覚め」でお願いします(^ω^)



(2010.10.9)

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