『18時にはばたき駅で待ち合わせ』

そう約束をしたのは昨日の夜の出来事。
25日は朝からアンネリーでアルバイトが入っていて終わるのは15時。出勤人数もいつもより多いから待ち合わせ時間には余裕で行けるはずだった。
だけど今日に限って大量の注文が朝から入ってて、おまけに出勤予定だったスタッフが体調を崩して何人か休んでいるみたいだ。
店長から残業を頼まれてしまい、もちろん断ることなんて出来なくてそのまま仕事を続けた。
なんとか仕事を切り上げてすぐに携帯電話を取り出し連絡をしようとしたけれど、こんな時に限って携帯の電池が切れてしまっていた。

約束の時間はとっくのとうに過ぎている。
あの子はもう帰ってしまったかもしれない。

焦りと不安を抱え駅までの道のりを全力で走って走ってやっとの思いで辿り着いた。

「やっぱり帰っちゃったよな…」

乱れた呼吸を整えながら待ち合わせ場所を何度も辺りを見回した。だけどオマエの姿は見当たらない。

「琉夏くん!」

諦めて帰ろうとしたその時、呼びかける声の方向へ振り向くとそこにはいるはずのないオマエがいて思わず目を疑った。

「よかったぁ…来てくれた。携帯も繋がらないから心配しちゃったよ」

「遅くなってごめん!…急に残業が入って…携帯も電池切れだった」

駅の中にある時計を見上げると時刻は20時を回っていた。寒い中、オマエを2時間も待たせてしまったのだと心底後悔をした。
それに今から遊園地に行っても間に合わない時間だ。

「もうこの時間だと今から遊園地行っても閉まっちゃってるよな…ごめん…」

「…仕事だったから仕方ないよ。お仕事お疲れ様」

俺に気を使って優しく笑いかけてくれたオマエの顔はどこか残念そうだ。
本当は遊園地のイルミネーションイベントに行きたがっていたのは俺が一番よく知っている。いつもイベントの情報誌を持ち歩いて眺めながら「彼氏と見に行くのが夢だったの」ってはしゃいでた。
せっかく彼氏になって初めてオマエの夢を叶えるはずだったのに。

沈黙が続き、二人の間に重たい空気が流れる。
やっぱり呆れちゃったよな。彼女の約束を破ってしまう彼氏なんて最低だ。
もう一度謝ろうと顔を上げた瞬間、オマエは上を見上げていて何かを見つけたのだろう。瞳をキラキラと輝かせていた。

「見て見て琉夏くん!雪だよ!雪が降ってる」

「えっ…?」

指差す方向を見上げると駅の構内の窓から白い雪がパラパラと降っていた。
この町にクリスマスに雪が降るなんて生まれて初めてで夜空に映るその光景が幻想的に見えた。

「すごいすごい!ホワイトクリスマスだね」

「…どうりで寒いはずだ」

ここまで全力で走ってきた身体は汗が乾いてひんやりと体温を低下させ、背筋がぶるりと振るえる。寒さに耐え切れなくなった俺はくしゅんと小さくくしゃみをした。
そのくしゃみに気付いたオマエは俺の目の前に回り込み、そのまま小さな身体を俺に預けてぎゅうっと抱きしめてくれた。

「ねっ?こうしてたら寒くないでしょ」

「…うん。暖かいね」

はにかみながら鼻の頭を真っ赤にして笑うその顔がガキの頃のオマエにそっくりなんて言ったら怒るかな?
オマエとこうしてくっついているだけで気持ちがこんなにも満たされる。

「今日はごめんね。せっかくオマエが行きたがってたイベントだったのに…」

「なんでそんなに謝るの?わたし怒ってないよ?」

「だってオマエ…彼氏と行くのが夢だったって…」

「…確かに行けなかったの残念だったけど、今こうして琉夏くんの隣にいれるだけで幸せだよ」

「……ありがとう」

「ふふっ琉夏くんは?」

「俺も、オマエが隣にいてくれるだけで幸せだよ」

目の前に広がる夜空の雪よりもオマエの笑顔はキラキラと輝いてみえてなんだか泣きそうになった。

オマエがいてくれればそれだけでいい。

オマエが俺の幸せだよ。

来年も再来年もずっとオマエの隣が俺でありますように…。









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一日遅れのクリスマスSS。間に合わなくてすみません…!
やっつけで書いたからちょこちょこ書き直しますf^_^;

後半の琉夏くんの台詞はこのSSをイメージした歌詞から少しお借りしました。
なんだかベタな展開で書いてて胃がムカムカしてきますね。笑
まぁクリスマスなので許して下さい…(^ω^;)うふ

(2010.12.26)

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