アルバイトや部活が忙しくてなんとかお互いの休みを合わせ久しぶりに遊園地まで遊びに来た。閉園までまだ時間があるからギリギリまで乗り物に乗って遊ぶ予定だったのに。本当についてない。

機械トラブルのアナウンスが流れて観覧車が頂上目前で止まってしまったのはつい先程のこと。

大好きな琉夏くんと二人っきりなのは嬉しいけれど、ゴンドラの中は密室。一緒にいるだけでいつもドキドキしているのに、今日は二人の距離がとても近い。このままだとわたしの心臓は一生分の鼓動を使い切ってしまいそうだ。

だけど、ドキドキの原因はもうひとつあった。

「ゴンドラってさ、けっこう揺れるんだね」

「う、うん…」

動いている時は気づかなかったけれど停止したゴンドラはよく揺れる。
風が吹いただけでゆらゆらと揺れて、強い風が吹いたらゴンドラごとそのまま地上へ落下してしまいそうで急に怖くなった。

「じゃあもっと揺らしてみよっか。きっとスリル満点だよ」

「やっやだ!やめて…!」

立ち上がろうとする琉夏くんを止めようと両手で彼の腕を必死に掴んだ。
べつに高所恐怖症な訳ではないのにその発言はわたしを不安にさせるには十分過ぎた。
それに琉夏くんの発言は、いつも本気なのか冗談なのかイマイチわからない。
わたしの行動がよっぽど面白かったみたいで笑いを堪えていた。

「ごめんごめん。冗談だから許して?」

「もう!本当に落ちたらどうするの!?」

「大丈夫。その時は俺が守ってあげるから。ほら…危ないからこっちおいでよ」

手招きをする琉夏くんの瞳は何か企んでいてなんだかそっちに行く方が危ないような気がするのはわたしだけなのかな…。
身の危険を感じてそこから後ずさりするように離れると琉夏くんは少し口を尖らせて拗ねた顔になった。

「じゃあ、こうする」

「ひゃっ」

突然、腕をぐいっと捕まれて体制が崩れる。あっという間に琉夏くんの膝と膝の間に座らされて、後ろからぎゅっと抱きつかれていた。外は相変わらず風が強く吹いていて、わたしの心臓はドキドキと大きく音をたてる。こんなに琉夏くんに近づいていたら心臓の音聞こえちゃう。

「すごくドキドキしてる。観覧車に?…それとも、俺に?」

耳元で甘くて優しい彼の声を囁かれた身体はビクッと反応してしまい、クスクスと笑われてしまった。
やっぱり心臓の音は聞こえてたみたい。

「かわいいね。意識してるんだ」

「るっ、琉夏くん!からかわな…んん!」

最後までいい終わる前に唇を塞がれてしまい、琉夏くんの柔らかい唇を押し当てられた。突然のことで息継ぎがうまく出来なくて息をするのも苦しい。琉夏くんの胸をドンドンと叩いて抵抗してもびくともしない。
ゴンドラ内にはちゅっちゅとリップ音が鳴り響いて、その音が恥ずかしくて瞳をぎゅうっと閉じる。

そのうち口内に琉夏くんの舌も侵入して初めての行為に戸惑いながら自分の舌を奥へと引っ込める。だけど琉夏くんの舌はわたしの舌を追いかけて奥まで侵入してきた。逃げ場を失って絡められた舌先でそれに答えると味なんてないはずなのに甘い甘い味がした。

やっと唇を離されて呼吸を整えながら閉じていた瞳をゆっくり開くと大好きな彼が優しく微笑んでくれた。だけど、その表情は熱を帯びていて何て言うかすごく色気がある表情で心臓の音がより大きな音をたてた。

「るっ…るかく…」

「さっきの質問。…なんでドキドキしてたの?」

「そ…れは……」

「答えてくれないとまたチューしちゃうよ?」

琉夏くんは意地悪だ。答えはわかっているのにわたしにわざと聞いてくる。瞳を細めて笑いかける彼は更にわたしを責め立てる。
キスの続きをしたいのも知ってて聞いてくるんだ。

「あれ?答えないの…?」

「…琉夏くん。わたし……」

その時、ガタンと大きな音を立てて観覧車は動き出した。同時にゴンドラ内のスピーカーからは運転再開のアナウンスが流れる。
急に動き出してふらつくわたしをしっかりと優しく抱き寄せてくれた。彼の優しいひとつひとつの行動にわたしはいつも恋に落ちる。

「…なんだ。もう時間切れか」

残念そうに大きなため息を尽く琉夏くんの顔を見上げると、その息がかかるくらい顔の距離が近すぎて急に恥ずかしくなり慌て琉夏くんの胸に顔を埋めた。





しばらくして観覧車は地上へと辿り着いた。ずっとゴンドラの中にいたからか足元がふわふわして変な感じ。
隣にいる琉夏くんは携帯電話をポケットから取り出して、メールを確認しているみたいだ。
あんなに大胆なキスをしたのに琉夏くんはいつも通りでなんだかずるい。あの行為を気にしているのはわたしだけなのかな…。
余裕のある琉夏くんを少し睨みつけると目が合ってしまった。
あっまた何か企んでる顔だ。

「今日さ、コウがバイトで遅くなるんだって…」

「え…?」

「…俺ん家、来る?」

突然の誘いにあわあわと動揺していると目の前に手を差し出された。

「さっきの答え、教えてくれる?」

ああ、やっぱり彼は意地悪だ。わかっている答えを聞いてくるなんて。
もちろん、その誘いを断ることは出来なくてわたしはその手を受け入れた。


(さぁ、答えあわせをしよう。)








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妄想から生まれた産物。

やはりルカバンは甘いお話が好き(´▽`)v

(2010.12.15)

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