「わっ」
教室の窓際でオマエとたわいもない話をしていると勢いよく風が吹いた。その風は大きなカーテンをひらひらと泳がせながらあっという間に俺達をカーテンの中に包み込んでしまった。
昼休み中のクラスメイト達がカーテンの外にいるのに、この中だけまるで別世界にいるようで不思議な気分だ。
窓からは相変わらず風が吹いていて、オマエの髪が風に優しく撫でられる。ふわりといいにおいが俺の鼻先まで風にのって届く。オマエのお気に入りのシャンプーのにおいだとすぐにわかった。
「今日の風気持ちいいね」
そういいながら耳に髪をかけるその仕草が妙に大人っぽくて、いつも可愛いオマエが綺麗でなんだかドキドキする。
だから、
我慢出来ずについ口に出してしまったんだ。
「ねぇ、」
「琉夏くん、なぁに?」
「…キスしていい?」
それまでニコニコしていたオマエの顔が段々真っ赤になってきて、いつものオマエに戻っていく。
さっきの大人っぽいオマエはどっかへ消えてしまってちょっと残念。
「なっ何言って…!」
「しっ!…静かにしないとみんなにバレちゃうよ?」
慌てて声を出すオマエの形のいい唇に人差し指で優しく触れた。
その感触が柔らかくて、早くオマエにキスがしたいと焦る気持ちをなんとか落ち着かせる。
「あっあとで琉夏くん家に行くから…」
「やだ。待てない」
「る、琉夏く…」
ジリジリとオマエに近づきあと数センチで唇に触れそうな距離のところで止まる。
ほら、こうするとオマエは動けなくなるんだ。
くりくりとした大きな瞳に俺を映しだして、もう瞳を反らすことも出来なくなっている。
「…好きだよ」
「……っ」
「オマエは俺が嫌い?」
「…それ、ズルイ……」
いっそのことオマエは俺のものだってバレてしまえばいいのに。そしたら悪い虫も寄り付かなくなる。
オマエを逃がさないように小さな手を握りしめると少しだけ震えた。
「嫌い、じゃない…。わたしも琉夏くんが好き」
でもね、
オマエが俺を好きと言うその声、その表情さえ誰にも見せたくない。一人占めしたいんだ。
矛盾してるけれどオマエは俺だけのものだから。
「…うん。俺も大好きだよ」
だから、ね?
早く早く。
みんなに見つかる前に。
ここでキスして。
----------------
このあとバンビは琉夏くんに美味しく食べられましたとさ(^ω^)
(2010/11/24)