「わぁ、コウちゃん、これすっごくかわいいよ!」
「あぁ?」

みてみて、とオマエに手招きをされて一度通り過ぎた道へと戻る。

放課後にショッピングモールに寄りたい、なんてオマエが言うから仕方なくついて来たがやっぱりやめておけば良かったと心底後悔した。
女の買い物は異常に長い。

とくに何を買いたいとか目的もない癖にウロウロと無意味な行動をとりやがる。

ウンザリした気持ちを隠しながらオマエに近付くと指差す先にはキラキラと七色に光る指輪がズラリと並んでいた。
…女っていう生き物はなんでこんなに光り物が好きなのか理解に苦しむ。

「あの指輪すごく綺麗…」
「…はぁ、めんどくせぇ」
「もうっ!コウちゃんのわからず屋!」

つい本音が出てしまい、手で口を覆いながらオマエを見るとプクッと頬を膨らませて俺を睨む。怒っているのにその表情に全く迫力がなくて笑ってしまいそうだ。

「好きな人から指輪を貰えたらきっと幸せなんだろうな…」

ウィンドーに映るオマエの顔は恋する女の顔になっていて、オマエの『好きな人』が俺であってほしいと願った。






一ヶ月後、オマエの誕生日がやってきた。

もちろんプレゼントはオマエがあの時欲しがっていたあの指輪。

女にプレゼントを買うなんて生まれて初めてで、店に入った時も「彼女さんにプレゼントですか?」なんて店員に聞かれてどれだけ恥ずかしかったことか。もうあんなところ一生行かねぇ…!
しかもこの指輪、見た目はかわいらしいが値段はかわいくない。オレの今月のバイト代は一瞬で消えてなくなった。

だけど後悔はしていない。

まだ俺達は恋人同士と呼べる関係ではないけれど、これをきっかけにそういう関係に発展したらいいなんて考えてしまう。

俺の気持ちを込めた小さなプレゼントを見て柄にもなくニヤける。
俺が苦労して選んだこのプレゼントをオマエは喜んでくれるだろうか。

オマエの自宅まであと数メートル。プレゼントをジャケットのポケットに大事にしまい込み、少し緊張しながら歩いて行く。玄関の明かりが見えたその前に誰かが立っていた。

「……ルカ」

そこにはルカがいた。

どうしてルカがここに…。いや、ルカもあいつの誕生日を知らないはずがない。
ルカも俺と同じ目的でそこに来たんだとすぐに理解をする。

マズイ、先を越されたか。
チッと舌打ちをしてルカの様子を伺いながら近づく。よく見るとルカのその手には可愛らしくピンク色の包装紙と真っ赤なリボンで結ばれた小さな箱を持っていて、俺は思わず足を止めた。

「……俺と同じ箱…?」

乱暴にジャケットのポケットに手を突っ込み、先程しまい込んだプレゼントの箱を取り出し確認をする。

…やっぱり同じ箱だ。

ルカもあの店に行ったのか?いつ行ったんだ?

…中身も同じ、なのか…?

嫌な予感がした。
バクバクと鳴り響く心臓の音が耳から離れない。

ガチャリと音をたて玄関のドアから驚いた顔でオマエが出てきた。二人の会話はここからだと聞き取れないが、ルカが持っていたプレゼントを嬉しそうにオマエは受け取っていた。
俺の見たことない幸せそうな顔で…。

…ルカの前だとあんな顔もするんだな。

二人はまるで恋愛映画のワンシーンに出てくる様な恋人同士みたいだ。
心臓を誰かにぎゅうっと掴まれているようで痛くて苦しくて、オレはただそこに立ち尽くすことしか出来なかった。


オマエの好きな人は俺だと信じて疑わなかった。

だけど
オマエがあの時想っていたのは俺じゃない。
ルカだった。

ひとりで勝手に自惚れていた。


「馬鹿みてぇ…」


握り締めた拳の力に耐えられなかった箱はぐしゃりと潰れ、音をたてて地面に落下した。







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コウちゃんを虐め過ぎました。愛故の創作なので許して下さい(;^ω^)

(2010/11/19)

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