勘違いから始まる恋




ある日俺は、友達だと思ってた奴に告られていた・・・らしい。



勘違いから始まる恋



いやいや言い訳とかではなく、「好き」って言われたから「俺も好きだけど」って答えたってだけなんだけどさ・・・それが友情では無く愛情だという事に気付いたのは、一週間程経った後だった。


いつものように学校帰り、だらだらとそいつと二人で駅まで歩く道すがらいきなり「…………手」って言われたんだ。

「は?」と思ったけど、一応手をほいって差し出してみたら、何かめっちゃ照れながらその手を握ってきた。


「え?何どしたの」

「えええ?!い、嫌だった?」

「や、嫌とかでなく」

「だだだだだって、俺ら付き合って一週間も経つのに手も繋いでないじゃん?」



「…え?」

「………え」


ピタリとその場に立ち止まり、鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔で奴を見つめた。アレ?といった感じで奴もキョトンとしている。
――二人の間になんとも奇妙な空気が流れる。 先にこの空気を破ったのは奴の方だった。


「あれ?俺、好きって言ったよね?」

「あー…」

「お前も好きって言ってくれたから、つい、あ…あれ?」


俺の頭の中は今まで十七年間生きてきた中で最大級のパニックを起こしていた。いや、奴も然りなのだろう。


「わー!ご、ごめん!俺の勘違いだった!わわわわ忘れて!ごめ」


あまりにうろたえ慌てふためく奴を見て、ちょっと可愛いなとか思ってしまった事は、本人に伝えるべきなのだろうか。


「ちょ、何笑って…や、笑うよな、笑って当然だ。全部俺一人の勘違いで、さ。あー…もう、マジ死にたい!も、本当忘れて!」


一人で長々とそんな風な事を口走っては自分の髪をぐしゃぐしゃにするその様子が良い意味で滑稽に見えて、思わずククッと笑い声が零れてしまった。
それに気付いた奴が、頭に「?」を浮かべながらこちらに視線を送ってきた。


「や、もしかしたら、さ」

「な、何?」







「…勘違いじゃないかも、な」




暫くの間を置いた後、言葉の意味を理解したであろう奴の目にみるみる涙が溜まっていくのを、俺は口角をくいっと上げながら見つめていた。





---fin---




学生同士の恋って、案外こんなきっかけから始まっちゃうこともあったりするかなあ〜?などと思い付いて執筆した作品です。
ふとした瞬間から相手のことを可愛いとか、愛おしく思えて仕方がなくなったり…。
そんなきっかけの一部分を切り取ったにすぎないので、全体的に短い作品になりました。

ここまでお読み下さってありがとうございました!よろしければ、ぽちっと押して頂けると嬉しいです。


次ページからは番外編です

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