七夕の奇跡 01.




皆さま今晩は。織姫です。
なんて言っても信じて貰えないかも知れない。

だって僕は、男だから――



七夕の奇跡



改めまして今晩は、僕は織姫です。
訳あって、僕の大切な大切な想い人の彦星と、離れ離れになってしまいました。

「…はぁ」

窓辺に肘をつき、窓の外の夜空を見上げながら深い溜息。

「…!!」

その時。

空から降ってきた人影に僕は息を飲んだ。

「やあぁぁぁーほぉーっう!」

空から凄い勢いで降りてくるその人影は、明らかに僕にピントを合わせて手を振っている。

そしてその人影は…………

「ひっ…彦星…!」

そう。僕の想い人、彦星だった。

「おーりーひーめーっ!」

タン、と首尾よく僕の城のベランダに降り立った彼は、一年振りに再開したなんて微塵も感じさせない程何一つ変わっておらず、いつもの屈託の無い笑顔で僕の目の前に立つ。

「っ…彦星っ」

僕は元々涙腺が弱い。
大好きで仕方がない彼に会えて、目からはいつの間にか大粒の涙が溢れていた。

「もう…織姫は泣き虫さんだなぁ」

僕をぎゅっと優しく抱きしめ、背中をさすってくれる。

「っぐっ…」

「ん?」

「あぃ…会いたかった…!」

「ん。俺も、会いたくて会いたくて、仕方なかったよ」

僕の頭を撫でながら、優しく彦星が囁く。

「好きっ…大好きっ…」

僕は縋るように彦星にまわしていた腕にぎゅっと力を込めた。




一年に一度、たったこれだけしか僕達は逢えないけれど、でも僕は永遠に彦星だけを愛し続けるんだ。


大好きだよ、彦星。





---fin---






あ、今日七夕じゃん!と思って作った作品です。即興なのでかなり短いですね。織姫と彦星の、年に一度の大事な大事な日にスポットを当ててみました。



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