妖しいアルバイト 01.
金が無い。
…金がねえぇぇ!!!!
金が欲しい。なんか良いバイトねぇかな。でも今更コンビニとかのバイトはやりたくないし、かといって肉体労働はなぁ…。俺の性に合わない。
そんな事を思いながら大学をふらふらしていた俺に、一人の男が声を掛けてきた。
「初めまして。私は高良明人(たから あきひと)と言います。あの…。良いバイトがあるのですが、やってみませんか?」
その男はスラッとして身なりがしっかりしている風で、これが普通に女にナンパしてるんだったら皆ホイホイ着いて行ってしまいそうな感じだった。
だがしかし、初対面でこんな事言ってくる奴は大概信用出来ないと決まってる。
「あ、興味無いっす」
そう歩き様に言い捨ててスタスタ歩こうとする俺を、その男が引き止める。
「貴方にお願いしたいんです!駄目…でしょうか?」
俺の腕を掴み、振り向いた俺に必死でそう頼み込む姿になんというか心をうたれてしまった、としか言いようがない。
妖しいアルバイト
「では、こちらが更衣室になりますので、更衣室に用意してあります御召し物を着て来て戴けますか?」
後日、連れて来られたのは、とあるマンションの一室だった。
「え?何?撮影、って聞いてたから、何かの雑誌とかの撮影だと思ってたんだけど」
「はい。大丈夫ですよ?貴志さんは安心して、着替えて来て下さい」
貴志、というのは俺の名前だ。
いつの間に下の名前で俺の事呼ぶようになったんだろうか。そんなに仲良くなったつもりはなかったけどな。
つか、大丈夫って何が大丈夫なんだ?…まぁ、このマンションの部屋には俺と高良さんの二人しか居ないみたいだし、危ない事は無いよな。うん。
何と言っても謝礼が良すぎる。2時間で5万とか…有り得ないだろ。でも、この金は喉から手が出る程欲しい。ある程度の我慢は覚悟の上だ。不安要素が多々ある事はこの際目を瞑ろう。
よし!着替えてきてやろうじゃねぇか!
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